2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610022
|
Research Institution | Hanazono University |
Principal Investigator |
佐々木 閑 花園大学, 文学部・仏教学科, 助教授 (40225868)
|
Keywords | 婆沙論 / 律 / 大乗仏教 / 部派仏教 |
Research Abstract |
仏教が多様化し,大乗仏教という大きな潮流が発生してくる状況を,アビダルマ文献の中に見いだそうというのが研究の目的である。そこで平成12年度は,アビダルマ文献の中でも最も重要でありながら,その膨大な分量のせいで十分な研究が為されてこなかった『婆沙論』を研究対象にとりあげ,そこに引用される律の同定作業を行った。『婆沙論』は有部の論書であるから,そこに引用される律は当然,有部の律,すなわち『十誦律』あるいは『根本説一切有部律』のいずれかに一致するであろうと予想していたのであるが,以外にも,『婆沙論』に引用される律は,この二本の有部系律どちらにも一致せず,現存しない未知の律から引用されたものであるという結論になった。これにより,『婆沙論』時代の有部の状況は,我々が従来想定してきたものと,かなり異なるものであった可能性が高くなる。この成果は平成12年12月に論文として発表した(「婆沙論と律」『印度學仏教學研究』第49巻1号pp.421-413)。また,この作業中に,大乗仏教の起源と部派仏教の起源は実は同一の事件にあるのではないかという新たなアイデアが浮かんできたため,その点を詳細に考察した論文を作成した。もしこのアイデアが承認されるなら,部派仏教の延長線上になんらかの原因をきっかけとして大乗仏教が発生したという従来の説は修正され,部派仏教が成立したことをもって,大乗仏教も同時にその基盤が成立したという新たな構図が提示されることになる。これはインド仏教史に変更を迫る重要な問題であるため,次年度以降において,その是非を確認するための本格的な研究にとりかかるつもりである。上記の論文は『桜部建博士記念論集(仮題)』に掲載される予定である。
|
Research Products
(2 results)