2001 Fiscal Year Annual Research Report
死および死者崇拝・死者儀礼の宗教的意義に関する比較文化的・統合的研究
Project/Area Number |
12610029
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池澤 優 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (90250993)
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Keywords | 死 / 死者儀礼 / 死者崇拝 / 祖先崇拝 / 他界観 / 死生観 / 生命倫理 |
Research Abstract |
前年度から継続して、当該研究分野における先行研究の収集・整理、ならびにブリオグラフィーの作成を続けたが、本年度は特に重点を置いた分野の一つは、現代的死生観や生命倫理の分野である。この分野の日本で公刊された図書の収集・分析と整理を通して気がついたのは、近年の医療技術の進展が生命の始まりと終わりの双方に対して新しい状況を生み出しつつあり、それが新しい死生観を創出するであろうという点については、ほぼ共通した認識が存在する一方で、それがあたかも伝統とは乖離したところで世界中で普遍的に起こっているかのようにイメージされており、諸文化の伝統的な死生観が現代的状況の中でどのように反映するのかについての研究があまりなされていないということである。本研究は死に関する先行研究の分析を通して、諸文化の死生観の類型化を試みるものであるが、それが現代的な状況の中でどのように発現するかを考えていく必要性を認識した点は本年度の進展であったと言える。 本年度に重点を置いたもう一つの分野は、研究代表者が専門とする中国における死生観と葬制・死者儀礼の資料を重点的に収集することであった。その中でも近年の考古発掘で得られた新出土資料には死生観を探る上で興味深いものが多い。それらの分析の結果、祖先崇拝を軸とする古代型の死生観から、死者供養を軸とする中世型の死生観への変転が存在し、その転機はおおよそ漢代に求められることが明らかになった。 本年度でも先行研究のコピー(書籍として入手することが困難なもの)が思ったように進展しなかった。来年度は本研究の最終年度になるので、その点を踏まえ、手薄な部分の文献を収集し、その結果を報告書としてまとめたいと考えている。
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Research Products
(1 results)