2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610038
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
宗像 惠 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (40135504)
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Keywords | 啓蒙思想 / ジェンダー論 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に引き続き、フランス啓蒙期諸思想の文献を中心にジェンダーに関わる資料を収集するとともに、本研究の完成に努めた。 昨年度に行ったデピネ夫人等のフランス啓蒙期の女性思想家たちの動向の調査を続行するとともに、対極的な立場を取ったルソー、コンドルセを中心として、同時期のジェンダー思想に対する分析を行った。 デピネ夫人に関しては、彼女の教育論や書簡を検討し、プーラン・ド・ラ・バールの論点を展開した形で、デピネ夫人が女性の知的能力の開発に関する先駆的理論家であることを確証し得た。 ルソーに関しては、教育論『エミール』の女性教育の項をはじめとする彼の議論を検討し、性別身体の二元論の生成期においてルソーが時代の思潮の中で、自由と平等が両立可能な社会の原理を構想する一方で、いかに男女の補完的機能に関して立論したかを跡付け得た。 コンドルセに関しては,革命期におけるコンドルセの言説を検討し、コンドルセが、ユダヤ人への市民権付与や奴隷制の廃止を説いたのと同様に、女性と男性との平等を説き、女性の市民権からの排除に論駁を加え、また貧富の差と同様に性別にも関わらない公教育の推進を唱え、革命の理念である人間の平等という原理に最も忠実な論者であったことを確かめ得た。 これらの研究によって、19世紀におけるジェンダーに関する論争の起源となる諸思想に関する調査を、相当程度に達成することができ、近代全般におけるジェンダー思想の系譜の検討の基盤を形成することができた。 本年度は本研究を基に公表した成果はまだないが、提出される研究成果報告書を踏まえて研究成果を学術論文にまとめて発表すべく準備中である。
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