2001 Fiscal Year Annual Research Report
スペキエース、幾何光学を用いるルフス、ベーコン、オレームらの認識論の系譜
Project/Area Number |
12610046
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
中村 治 大阪府立大学, 総合科学部, 助教授 (10189029)
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Keywords | オレーム / ヤン・ファン・エイク / 光 / 色 / アリストテレス / アルハーゼン / スペキエース / 幾何光学 |
Research Abstract |
西洋美術史上では15世紀初めのヤン・ファン・エイクにおいて初めて色の濃淡や光がかなり完成した技法でもって描かれるようになるが、彼の先駆者としてはブシコーの画家たちが考えられている。ではヤンやブシコーの画家たちは色の濃淡や光を描くというアイデアをどこから得たのか。シャーマンの最近の研究によると、それは14世紀後半のニコル・オレームではないかという。オレームはシャルル5世に依頼され、アリストテレスをフランス語訳することに携わっていたが、本に挿し絵を描くというプロジェクトにも携わっていた。そしてシャルル5世の、そして後継者シャルル6世のパリ写本工房において挿し絵を描いていたのがブシコーの画家たちである。オレームから彼らがアイデァを得たとしても不思議ではない。またオレームの考えは色の濃淡や光を描くということに理論的根拠を与えるものである。彼は「対象が媒体を変化させ、媒体が視覚器官を変化させる」というアリストテレスの考えをとる。しかしアリストテレスの考えによれば、なぜ対象があるがままに目に写るのかを説明できない。そこでオレームは光が直進して対象の形象を伝えると考えるアルハーゼンの幾何光学を取り込み、対象の形象(スペキエース)が目(瞳)に、対象において形や色があるのと同じ配置で同じように写ると考える。瞳に写っているスペキエースの色は一種の質である。ところでオレームは質を図形で表すことを考える。例えば日が射すと、部屋に影ができるが、濃い影もあれば薄い影もある。部屋にできた影に直線を引き、その直線上における影の暗さの度合いを各点ごとに棒グラフで表し、その頂点を結んでいくと、一つの平面図形ができる。こうすると質の強弱を表すことが可能になる。この考えは目に写ったスペキエースを絵で表すことに利用可能である。このようなことを2002年3月30日に京都大学文学部美学美術史関係の研究会で発表する予定である。
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