2000 Fiscal Year Annual Research Report
アリストテレース『詩学』の文献学的・芸術哲学的研究
Project/Area Number |
12610059
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
津上 英輔 成城大学, 文芸学部, 教授 (80197657)
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Keywords | アリストテレース / ミーメーシス / 『詩学』 / 芸術哲学 |
Research Abstract |
本研究はアリストテレース『詩学』を一貫した芸術論ととらえ、芸術を彼の哲学体系に正当に位置づけることを目的としている。本年度は第9章に展開される詩作と歴史の比較論を出発点として、詩作を貫き詩作を歴史(すなわち経験世界)から区別する根拠としての因果性(いかなる出来事ゆえにその結果が生じたかが明らかであること)が、経験世界にしばしば認められる因果性といかに等しくいかに異なるかを明らかにすることを目的として研究を進めた。 その結果、この問題ともっとも密接に関連する第13章の「過ち(ハマルティアー)」の考察から、悲劇の機能について一応の結論を得ることができた。すなわち、悲劇の主人公はアリストテレースによれば、或る「過ち」ゆえに不幸に陥るが、他方それは悪漢の場合と違って、当然の報いとしてそうなるわけではない。この一見矛盾する二律は、我々の理解によれば、アリストテレースの矛盾にではなく、言動にあたって未来を予測することを求められるが、しかし完全には予測しきれない人間存在の根源的限定性に帰されるべきである。なぜなら、言動の瞬間における行為者は、それが過ちであるか否か、言い換えれば言動を取り巻く状況のいかなる点に着目して当の言動の当否を測るべきかを知ることができず、結果から遡ってしか、言動の当否は知り得ないという意味で、未来を完全に予測することができないが、他方、結果から遡るに際しては因果の系列を辿ることができたという意味で、当の言動と結果とは必然的ないし蓋然的に結ばれていると考え得るからである。言い換えれば、人はつねに何の予感もなく過ちを犯し得、しかも生じた結果について責任を負わなければならないのである。 関連する因子を限定しつつ、そのことを見えやすい角度から示すのが悲劇である。拡張して言えば現実世界に働く因果性を明確な姿で提示するのが、芸術の機能である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 津上英輔: "「大きな過ち」:アリストテレース『詩学』第13章における悲劇性"美学美術史論集(成城大学大学院文学研究科). 13. (2001)
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[Publications] TSUGAMI Eske: "Aristoteles Musicus : Causality and Teleology in Johannes de Grocheio's Ars Musicae"JTLA(東京大学文学部美学研究室発行). 25. (2001)