2000 Fiscal Year Annual Research Report
ベラスケスとスペイン宮廷画家や総合的研究-画家像、制度と社会-
Project/Area Number |
12610064
|
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
大高 保二郎 上智大学, 外国語学部, 教授 (70118503)
|
Keywords | ベラスケス / フェリペ4世 / 宮廷画家 / コンベルソ / パチェーコ / ボデゴン / パラゴーネ / サンチャーゴ騎士団 |
Research Abstract |
三年研究計画の初年度として、1 研究全体を通じて必要と予想される基礎文献の収集と拡充、2 一九九九年十一月開催のセビーリャでのベラスケス・シンポジウムの発表成果の分析と同展覧会の検討、3 ベラスケスと宮廷画家制度の歴史、その環境(諸宮殿の絵画装飾と演出意図)をめぐっての資料調査、等を中心に進めてきた。 主たる成果の一つはフェリペ四世の宮廷とベラスケスの特殊な関係と、この宮廷画家の異常な寡黙ぶりに、改宗ユダヤ教徒(converso)という隠された出自が関与している可能性が極めて高いことを示唆した点である。 その第二は、セビーリャ時代のベラスケスの活動を「理論から実践へ」と位置づけ、パチェーコの絵画理論(例えば"磔刑"図像や"ボデゴン")が弟子の実制作においてどう反映、解釈、変容させられたかを跡づけようとした(スペイン・ラテンアメリカ美術史研究会で報告済み、近く活字化の予定)。 第三としては、ベラスケスに関する積年の諸問題のうち、二点について解決の糸口が見えてきたことである。その一は、ベラスケスに限らず、バロック画家たちがしばしば画材とした古代の哲人や文人たちのテーマが必要とされた文化的、宗教的背景に関して。いま一つは、中期の肖像画「彫刻家モンタニェース(?)の肖像」の制作意図がスペインにおける"パラゴーネ"論へのベラスケス流の表明にあったのではないか。 ともあれ、二年度は宮廷画家ベラスケスの諸問題を発表する予定である。
|
Research Products
(1 results)