2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610075
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
宮崎 謙一 新潟大学, 人文学部, 教授 (90133579)
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Keywords | 音楽的音高 / 絶対音感 / ストループ効果 / 言語情報処理 / 反応時間 / 干渉効果 |
Research Abstract |
音楽における高さは非言語的なものであるが、人間の認知システムがそれを効率的に処理することができるようにするために言語的ラベル(音名と階名)が割り当てられている。従って、音楽的音高を処理するときには、非言語的情報と言語的情報の両方の処理システムが働く。 音高の言語的ラベルと音高とが一致しない場合には、音高の認知が妨害される場合がある。このような音高名と実際の音の高さの間の不一致による干渉効果は、一般的には知覚属性と言語的ラベルの間の相互作用によるものであり、視覚に見られる色と色名との間の相互作用により生じるStroop効果と類似の現象と見なすことができる。 実験では,被験者は階名シラブル(ド、レ、ミ、...)で歌われた声を聞き、発音された階名は無視して声の高さを答える音高同定課題と、逆に声の高さは無視して発音を繰り返して言うシラブル復唱課題を行った。その結果、音高課題では、音高-シラブル不一致の条件の方が一致条件よりも反応時間が長くなる干渉効果がどの被験者群でも観察された。一方、シラブル課題では、絶対音感を持たない群では一致条件と不一致条件の間で反応時間に違いがなかったのに対して、絶対音感群では、不一致条件の方が一致条件よりも反応時間が有意に長くなる逆Stroop効果が観察された。視覚的Stroop現象では,印字された色名単語を読み上げる速さが、その色名と異なる色で文字が印字されていても影響を受けること(逆Stroop効果)はない。しかしシラブル課題で絶対音感保有者に見られた逆Stroop効果は、Stroop現象の例外的事実として注目に値する。絶対音感保有者では音高の言語的符号化が高度に自動化しているために、単純にシラブルの発音を繰り返すだけの課題に対しても、音高符号化が妨害的な影響を及ぼすことを示すものと解釈される。
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