2000 Fiscal Year Annual Research Report
反復盲,負のプライミング,指示忘却課題を用いた実行機能の認知神経心理学的検討
Project/Area Number |
12610077
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小松 伸一 信州大学, 教育学部, 助教授 (50178357)
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Keywords | 反復盲 / 負のプライミング / 指示忘却 / 実行機能 / 抑制 |
Research Abstract |
本研究は、(1)反復盲、(2)負のプライミング、(3)指示忘却という3種の記憶現象を取り上げ、発達段階の異なる健常者群、および、障害の性質や度合いの異なる患者群を対象に、これらの現象がどのように出現するかを実証的に検討することを目的とした。今年度は、理論的検討と実験的検討の両方を試みた。 理論的検討においては、反復盲、負のプライミング、指示忘却という3種の抑制現象に対応する検査課題を設け、課題間で遂行の差を吟味するという本研究のアプローチによって、抑制処理のどの側面を明らかにできるのかを考察した。抑制の次元として、(1)行動指標、(2)被験者の抑制意図、(3)不適切情報の活性化という3つの観点から、これら3種の現象の分析を試みた。この結果、(1)3種の記憶現象はいずれも、抑制処理能力を測るための「行動指標」とみなされてきた点で共通すること、(2)反復盲は、課題遂行において被験者に何ら「抑制意図」を求めないという点で残り2つの現象と相違すること、(3)負のプライミングと指示忘却は、抑制すべき「不適切情報の活性化」が意図的か無意図的かという点で異なることを理論的に明らかにした。したがって、従来は単一の現象として扱われてきた抑制処理は、3つの次元から異なる3水準に分解でき、それぞれの水準が、本研究で検討対象となる3種の現象の各々に対応するという理論的枠組みを提起した。 実験的検討においては、健常大学生を被験者とした実験を行い、反復盲、負のプライミング、指示忘却という3種の抑制現象が頑健に出現しうるような実験材料と手続きの確定を試みた。この結果、特に反復盲と負のプライミングに関しては条件設定の微妙な相違によって現象の再現が困難になることを明らかにし、どのような条件で現象が頑健に生じるのかを論及した。
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