2000 Fiscal Year Annual Research Report
情動的言語刺激の知覚と記憶における大脳半球機能差に関する実験神経心理学的研究
Project/Area Number |
12610083
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
永江 誠司 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (20108418)
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Keywords | 大脳半球機能差 / 情動言語処理 / 知覚段階 / 記憶段階 / エピソード記憶 / 意味記憶 / 右半球説 / 陽性・陰性情動価説 |
Research Abstract |
本研究の目的は、情動的言語刺激と非情動的言語刺激を視野分割提示法によって提示し、それらの視野優位性を知覚段階と記憶段階で比較することによって、言語の情動的意味処理の大脳半球機能差について検討するところにある。それによって、言語の情動的意味が左右どちらの半球システムによって処理されているか、知覚と記憶のそれぞれの段階で明らかにすることを目的としている。 本年度の研究では、まず、言語刺激処理の大脳半球機能差について基礎研究を行なった。その結果、言語刺激のエピソード記憶検索では、左半球の処理が右半球の処理より優れていること、また、言語刺激の意味記憶検索でも左半球が優れていることを明らかにした。これらの結果から、言語刺激処理がベースラインとして左半球優位を示し、それは知覚過程とともに記憶過程でもいえることを確認した。 この基礎研究の結果に基づいて、次に、情動的言語刺激の知覚における大脳半球機能差について検討した。刺激として、陽性情動漢字、陰性情動漢字、中性漢字を用い、視野分割提示法によって提示した。その結果、陽性情動漢字と中性漢字は左半球優位を示すのに対し、陰性情動漢字では半球差がみられないことを明らかにした。刺激の情動的意味処理の大脳半球機能差については、これまで刺激の情動価にかかわらず右半球優位とする「右半球優位説」と、左半球は陽性情動処理優位、右半球は陰性情動処理優位とする「陽性・陰性情動価説」が提唱されている。 本研究の結果は、情動的言語処理の場合、基礎研究でも示されたように、言語処理であるがゆえにベースラインとしては左半球優位を示すが、陰性情動言語処理については左半球優位がみられず、左右半球差がなくなることを示した。これは、右半球が陰性情動言語に対する処理システムをもっていることを示唆しており、二つの仮説をそれぞれ部分的に支持するものと解釈することができる。
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