2000 Fiscal Year Annual Research Report
発話時に生じる笑い"laugh-speak"に関する心理学的研究
Project/Area Number |
12610085
|
Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
桐田 隆博 岩手県立大学, 社会福祉学部, 助教授 (20214918)
|
Keywords | 笑い / laugh-speak / 会話分析 / トランスクリプション / 認知点 / 発話 |
Research Abstract |
Laugh-speakとは「話しながら笑う」現象を指す。本研究では、日常の会話場面や実験的場面での発話やテレビのトーク番組など、幾つかの発話場面をビデオ撮影あるいは録画し、会話分析で用いられる発話の詳細なトランスクリプションを作成し、これを分析することでlaugh-speakの形式ならびに機能の特性を明らかにすることにした。 今年度は、まず、実験的な場面の事例として、10名の被験者を対象としたインタビュー形式の面接を実施し、面接場面をビデオ撮影した。この面接での会話の様子を詳細な発話のトランスクリプションによって再現し、これを分析の対象とした。発話の中で笑いが生じた箇所を評定者2名でチェックし、笑いを含む発話と、これと対をなす発話(隣接対)をlaugh-event(LE)として分析単位とした。次に、LEを発話における笑いの位置や方向性の観点から11パターンに分類した。このうち、laugh-speakが生じるのは5パターンあることが明らかになった。Laugh-speakが生じる5パターンのLEの中で、一方の発話者だけが笑うのは1パターンのみであり、残りの4パターンでは話し手と聞き手の双方が何らかのタイミングで笑っている。この4パターンのLEの中で、聞き手の笑うタイミングに注目すると、話し手のlaugh-speakによって聞き手の笑いうタイミングが前にずれ込むことが分かる。すなわち、聞き手の認知点(recognition point)の前向化が見られるのである。したがって、発話者は発話に笑音を上乗せすることにより、発話内容を「笑うべき事柄」として聞き手に呈示し、聞き手はこの笑音を手掛かりとして、その呈示を笑いで受けとめるという形式が見て取れる。話し手の「笑うべき事柄」というメタメッセージを聞き手が拒否した場合に、話し手のみが笑うパターンとなるのである。
|