2002 Fiscal Year Annual Research Report
発話時に生じる笑い"laugh-speak"に関する心理学的研究
Project/Area Number |
12610085
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Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
桐田 隆博 岩手県立大学, 社会福祉学部, 助教授 (20214918)
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Keywords | laugh-speak / 笑い / 会話分析 / トランスクリプション / 準言語 / インタビュー |
Research Abstract |
Laugh-speakとは「笑いながら話す」現象を指す。本研究はlaugh-speakの生起機序について心理学的に検討することを目的とする。昨年度までの研究によって、laugh-speakの生起は、言葉の「繰り返し」、「言い淀み」、「引用・再現」といった発話形式と関連することが明らかになった。また、その機能的側面については、Poyatos(1993)が指摘する準言語としての役割を果たしていると考えられるが、修辞の方向性およびその内容は非常に多岐にわたり単純に類型化できない様相を呈している。文脈から推測される主な機能を挙げると、まず、「打ち消し」、「緩和」、「強調」、「誇張」、「対比」といった発話内容の強度的側面に対する修辞がある。さらに、「同意」、「謙遜」、「含羞」、「困惑」、「弁明」、「不満」、「批判」、「自嘲」、「皮肉」、「矛盾」といった発話内容に対する話者の態度や感情的側面への修辞が推測された。さらに、こうしたlaugh-speakの生起は実験場面のみならず、日常生活の会話の中にもごくありふれたこととして観察されることが明らかになった。 今年度は、laugh-speakはアメリカ人には観察されないとするProvine(1996)の見解を再検討する目的で、アメリカのインタビュー番組を録画し、その会話を分析した。具体的にはNHKで放送されたブラボーTV(アメリカ)製作のインタビュー番組「アクターズ・スタジオ(Inside the Actors Studio)」を録画し、会話分析で用いられるトランスクリプションを作成してこれを分析対象とした。インタビューはアメリカの俳優に対して行われたもので、今回は、Meg Ryan他男女20名の俳優の発話を分析した。これまでの分析によって、laugh-speakはアメリカで活躍する俳優にも観察されることが明らかになった。ただし、laugh-speakの生起頻度は日本人の学生を対象としたインタビューと比較すると少なく、そこに推測される機能についても限定的であることが示唆された。
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