Research Abstract |
平成12年度は、ヒトを被験者として,同時選択の手続きにより,強化遅延と強化確率に関する選択データから,遅延時間や確率による報酬の価値割引の過程と,さらに,他者との報酬の共有と独占に関するジレンマ事態の手続きを構成し,実際に繰返し選択させたデータから,報酬の価値割引の過程を検討した. 同時選択の手続きは,選択期と結果受容期からなり,選択期における二つの選択肢に対する反応から,選択率を求めた.遅延時間条件では,一方の選択肢は,遅延時間を4秒とし,他方の選択肢で,遅延時間を4秒から40秒の範囲で組織的に変化させた.また,確率条件では,遅延時間をどちらの選択肢でも4秒とし,一方は確実に得られる選択肢,他方は,確率が0.4から1.0の範囲で変化する不確実選択肢とした.また,囚人のジレンマとチキンゲームに基づくジレンマ事態の選択手続きでは,1,500円を共同の貯金箱に入れるか,毎試行,先行の試行での選択に応じて変化するX円を自分の財布に入れるという選択を様々な共有人数のもとで行なった.共同の貯金箱を選ぶと,貯金箱に入れられた金額は,ゲームの参加者全員に,平等に分配されるが,チキンゲームでは,全員が財布を選ぶと,お金が没収されるという相違があった. この結果、強化遅延と確率による報酬の価値割引は,双曲線関数によりうまく記述できることが明らかとなった.さらに,ジレンマ事態の選択データに基づく報酬の価値割引も双曲線関数によりうまく記述できることが示された.また,共有による価値割引の程度は,ジレンマ構造の相違に依存すること,すなわち,チキンゲームの場合の方が割引率は低いことが示された.これらの事実から,報酬の価値割引が双曲線関数にもとづく過程であること,ジレンマ事態のゲームから割引率を求めることが可能であることが明らかになったといえる.
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