2001 Fiscal Year Annual Research Report
報酬の価値割引から見たセルフコントロールと社会的ジレンマの実験的研究
Project/Area Number |
12610088
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
伊藤 正人 大阪市立大学, 大学院・文学研究科, 教授 (70106334)
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Keywords | 価値割引 / セルフコントロール / 最大化 / 共有 / ジレンマ事態 / チキンゲーム / ヒト |
Research Abstract |
平成13年度は、ヒトを被験者として,共有による報酬の価値割引とセルフコントロール選択を取り上げ,共有による報酬の価値割引では,相手の共有率を2条件(20%と80%)設け,相手の共有率による影響を調べた.また、セルフコントロール選択では,先の試行での選択により,次試行の選択肢が変化する手続きを用い,不利な選択肢を選び続けることで,1セッション終了時の利得を最大化することができるか否かを検討した. 共有による報酬の価値割引では,チキンゲームに基づくジレンマ事態の選択手続きを用いたが,これは,1,500円を共同の貯金箱に入れるか、毎試行,先行の試行での選択に応じて変化するX円を自分の財布に入れるという選択を様々な共有人数のもとで行うものであった.共同の貯金箱を選ぶと,貯金箱に入れられた金額は,ゲームの参加者全員に,平等に分配されるが,全員が財布を選ぶと,お金が没収された.この結果、ジレンマ事態の選択データに基づく報酬の価値割引も双曲線関数によりうまく記述できること、相手の共有率により割引率が変化することが示された. セルフコントロール選択では一定の遅延後に得られる1,500円(預金)とすぐに得られるX円(財布)の選択を行わせた.先の試行で預金を選ぶと,次試行では1,500円(預金)とX+150円(財布)となり,逆に,先の試行で財布を選ぶと,次試行では1,500円(預金)とX-150円(財布)となった.その結果,利得の最大化を学習できた被験者とできなかった被験者に分かれたが,学習ができた被験者の割引率は,目先の不利な選択肢を選ぶ割合と相関のあることが認められた.今後,最大化方略の学習成立の要因を組織的に検討することが課題として残されたといえる.
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