2000 Fiscal Year Annual Research Report
急性ストレスのコントロール可能性と免疫系・内分泌系の変動
Project/Area Number |
12610095
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大平 英樹 名古屋大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (90221837)
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Keywords | ストレス / 免疫 / 唾液中免疫グロブリンA / 学習性無力感 / コントロール可能性 / 精神神経免疫学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ストレス刺激のコントロール可能性が、免疫系・内分泌系に及ぼす影響を実験的に検討することである。平成12年度は、代表的はストレス負荷課題とみられている時間圧を伴う暗算課題を用いた実験を行った。ストレス反応を反映するものとして、液性免疫系指標として唾液中の免疫グロブリンA(s-IgA)、内分泌系指標として代表的なストレス・ホルモンである唾液中コルチゾールを測定した。 被験者は大学生男女20名であり、コントロール可能群とコントロール不能群に分割した。各群の被験者は暗算課題を1問8秒の制限時間内で20分間連続的に解くことを要求された。コントロール可能群では被験者の真の正誤に応じたフィードバックがなされたが、コントロール不能群では被験者の解答の正誤に関係なく、コントロール可能群とヨークトした形で偽のフィードバックがなされた。この手続きにより、物理的なストレス強度を両群で統制して、コントロール可能性のみを操作することが可能になる。課題前、課題直後、30分休息後、の3点で5分間唾液を採取して上記2種類の指標を観測した。同時に、自律神経系の指標として心拍を連続的に測定した。 s-IgA濃度は急性ストレス負荷で一過性に上昇し、ストレス負荷終了後20-30分でベースラインに回帰する性質がある。その傾向は本研究でも確認された。さらに、このs-IgA濃度の変動は群間で差異がみられ、コントロール不能群で課題直後の上昇が有意に顕著であり、30分休息後もベースラインへの回帰はみられなかった。この群間差は心拍の結果と対応しており、コントロール不能群では心拍の上昇がより顕著であった。一方、コルチゾールには群間差は全くみられなかった。これらの結果は、急性ストレスによるs-IgA変動と、コントロール可能性によるその修飾が、内分泌系経由ではなく、自律神経系経由で起こっている可能性を示唆する。
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Research Products
(1 results)