2000 Fiscal Year Annual Research Report
幼児の「情緒表現」と「身体接触」が友だち関係の成立と維持に及ぼす影響
Project/Area Number |
12610103
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
本郷 一夫 東北大学, 大学院・教育学研究科, 助教授 (30173652)
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Keywords | 幼児 / 友だち関係 / 情緒表現 / 身体接触 / 保育所 |
Research Abstract |
本年度は、3年計画の研究の1年目に当たる。そこで、今後の研究を進めるための基礎資料を得るために、大きく2つの研究を行った。 1.保育の場における行動観察:10名の幼児の予備観察を実施した後、より特徴的な行動傾向を持つと考えられた2名の5歳男児抽出し、保育の場において縦断的に観察した。このうち、1名の男児O児は、知的な発達の遅れはないものの、顔の表情による「情緒表現」があまり明確でなく、他児の「情緒理解」も不得意な傾向が見られた。しかし、保育者に対しても仲良しの他児に対しても「身体接触」が多く、主として「身体接触」によって自分の情動の調整と他児との情動交流を行っている傾向がみられた。一方、もう一人の男児M児は、「情動表現」が豊かであり、O児と同様に多動傾向は認められるものの、友だち関係の形成、維持に「身体接触」があまり用いられることはなかった。しかし、自分自身でうまくいかない事態では、他児に対して「情緒表現」をするというよりも、次第にその場から離れ引きこもってしまう傾向も認められるようになった。 以上のことから、「情緒表現」と「身体接触」とが友だち関係の形成、維持に関して相互補完的に関連していることが示唆された。 2.保育者に対するアンケート項目の作成:上記の保育の場における行動観察及び文献研究から子どもの行動特徴をより広く捉えるための質問紙を作成した。アンケート項目は、I.保育者との関係、II.他児との関係、III.集団場面、IV.課題・製作・遊び場面、V.生活場面の5つの場面に分けて尋ねる形式になっていた。また、各場面の質問は、16〜22項目から構成され、項目内容は、A.注意集中・不注意、B.多動・衝動、C.認知・言語、D.情緒表現・理解、E.自己、F.その他といった子どもの6つの特徴と対応するように作成された。さらに、全体の質問紙は、II.親子関係、III.保育者の対応に関する各11項目と自由記述から成っていた。
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