2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610104
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
佐藤 香 山形大学, 人文学部, 助教授 (50183827)
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Keywords | 負の感情 / 文脈 / 対処方略 |
Research Abstract |
本研究の目的は、負の感情への対処方略はその感情の特徴を反映しているという想定の下、各感情の構造の特徴を考え合わせながら、各種の負の感情の発生文脈と対処方略の関係について実験的に検討することである。同一の負の感情で、従来の感情の認知評価研究での知見から明らかになる感情構造上での違いがなくとも、発生文脈の違いにより対処方略が異なってくることも考えられる。本研究の特色は、こうした負の感情の発生の文脈の違いに注目して現代日本の若者の負の感情についての対処方略の内容に検討を加えるところにあった。 本年度の具体的な研究は以下のように行われた。各種の負の刺激感情を用いて、感情の発生文脈と対処方略の関係を実験的に検討した。発生文脈の異なる各種の負の感情(怒り、不安)を刺激感情として使用して心理学実験を行い、発生文脈の違いにより採用される自己の対処方略に違いがみられるかを検討した。本研究で行われた実験の主な結果は以下のようになった。自己が直接不公平な扱いを受け、怒りが生じる場合は、外在化方略が、大切な他者が不公平な取り扱いを受けて怒りが発生した場合は、回避方略という方略が自己の対処方略として多く採用された。また、課題達成したか否かの結果を知ることによって発生する不安のような事態の変化が望みにくい場合には、情報探索という、不安状態を取り除き、不安定な感情状態からより明確な感情状態への移行が志向され、対人的な場面で集団からの排斥されそうな状況で生じた不安に対してはより直接的な原因追及の対処方略が自己の現実的対処方略として取られることが多いことが示された。これは対人場面のように相互作用で状況を変化させる可能性が高い場合にはより積極的な問題解決の動機づけがなされると解釈される。以上の実験結果から発生文脈が負の感情の対処反応に各種の影響を及ぼす可能性が示唆された。
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