2000 Fiscal Year Annual Research Report
青年・成人期知的発達障害者の人格発達に関する研究-自己認知・対人認知・友人関係概念の発達を中心に-
Project/Area Number |
12610110
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
宗澤 忠雄 埼玉大学, 教育学部, 助教授 (40219861)
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Keywords | 知的障害 / 青年・成人期 / 自己認知 / 対人認知 / 友人関係概念 / 労働場面と生活場面 |
Research Abstract |
1.埼玉県内の知的障害者援護施設を利用する、20〜32歳の男女計15名に協力を得て、K式発達検査および労働場面・生活場面それぞれの自己認知・対人認知の聞き取り検査を実施した。発達年齢は2〜8歳台にまたがったため、3歳台以上の者10名に自己認知・対人認知の聞き取り対象を限定した。この結果については、以下のとおり。(1)20歳台前半までの者は、発達年齢のいかんにかかわらず自己認知・対人認知が事実認識のレベルにとどまり、労働場面と生活場面における分化もなく未熟さが目立つ。自分や他者との関わりについての理解は、家庭や学校・施設等の身近な空間に限って、ある程度の客観性をもつが紋切り型の漠然性にとどまる。(2)20歳台後半の者は、自己認知・対人認知が自分の尺度にもとづく価評から一般的な尺度にもとづく評価の段階にまで達しており、生活場面の自己認知・対人認知において多価的認知が優位であった。対人経験の理解は、社会的な広がりを見せ、自己客観視や将来展望が形成されつつある。(3)以上のことは、(1)に発達年齢の相対的に高い者が多いことから、生活経験の質と援助内容によって左右されることを示唆し、(4)労働場面は共通の価値実現の場として、生活場面は多用な価値実現の場として、対人関係が組み立てられていることを反映すると考えられる。 2.友人関係概念の検査を実施した結果については、前述と同様に、生活場面の方で優位な傾向が認められ、形成・親密・信頼・嫉妬・葛藤・終結の内訳では、信頼に高い一般的傾向があることと、嫉妬・葛藤についての著しい個人差が認められた。嫉妬・葛藤のレベルの高いものは20歳台後半の者に限られ、実生活においても特定の友人をもつ、それ以外の者は特定の友人をもたなかった。
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