2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610111
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
首藤 敏元 埼玉大学, 教育学部, 助教授 (30187504)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二宮 克美 愛知学院大学, 情報社会政策学部, 教授 (20135271)
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Keywords | 道徳 / 自己決定 / 向社会的行動 / 発達 / ジェンダー / 介護 / 生き方 / 文化 |
Research Abstract |
本年度は,個人道徳(向社会的)場面において道徳的義務感と自己決定意識をどのように発達させるのかを明らかにするために,幼児(6歳児68名),小学生(11歳児158名),大学生(258名)および社会人(30代185名)を対象にした3種類の調査を行った。その概要は次のとおりである。 1.幼児はお手伝いや協力を道徳的義務の伴うものと判断する傾向が強い。約30%の幼児がそれらの向社会的行動を自己決定できるものと判断していた。 2.小学6年生は向社会的行動を個人の自由になる行動と判断していた。また自愛(prudence)を個人の自由と判断する傾向も強かった。「親の看病」をとても大切と判断する一方で,遊びを我慢してまで看病することを不満に思うと判断した。同様に,「親の誕生日にプレゼントをあげる」ことを大切と考える一方,おこづかいを使ってまでプレゼントすることを不満に感じていた。 3.大学生は,家族の介護のために自己犠牲することをとても大切と考えるものの,自己犠牲に伴う満足感は低いと判断していた。また,家族の要求よりも自己の要求を優先させることを大切と考え,自己優先に伴う満足感を高く評価していた。 4.成人も大学生と同様な判断を行っていた。さらに,女性の方が自己優先を高く評価していた。 今年度の調査から,家族の中での自己の位置づけ,自分の心身・可能性を大切にする態度,つまり自愛(prudence)を手がかりに,個人道徳としての生き方の発達をとらえることができることの示唆を得た。 来年度は中学生と高校生のデータを加え,また小学生と中学生を対象にした個別の聞き取り調査を行う。個人道徳に関する幅広いデータを集め,生き方としての道徳発達の理論化を試みる。
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[Publications] 首藤敏元,二宮克美: "大学生と親の親権威概念"日本教育心理学会発表論文集. 42回総会. 541 (2000)
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[Publications] 二宮克美,首藤敏元: "教師権威の概念化"日本教育心理学会発表論文集. 42回総会. 540 (2000)
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[Publications] 首藤敏元: "児童の性役割概念 -社会的領域理論からのアブローチ-"埼玉大学紀要教育学部. 50巻1号(印刷中). (2001)
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[Publications] 首藤敏元,二宮克美: "幼児における向社会的行動場面の判断と理由づけの特徴"発達心理学会発表論文集. 12回大会. 139 (2001)
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[Publications] 首藤敏元,二宮克美: "家族関係における自己犠牲と自己決定"日本教育心理学会発表論文集. 43回総会. 139 (2001)
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[Publications] 首藤敏元,二宮克美: "夫婦間葛藤における自己犠牲と自己決定判断"日本心理学会発表論文集. 65回大会(印刷中). (2001)