2000 Fiscal Year Annual Research Report
モンタージュ写真の構成が,犯人織別の正確さを妨げるのはなぜか
Project/Area Number |
12610123
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
菊野 春雄 大阪教育大学, 教育学部, 助教授 (00149551)
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Keywords | モンタージュ / 似顔絵 / 顔 / 目撃記憶 / 再認 / 面通し / 発達 / 写真帳 |
Research Abstract |
第一に、本研究では、これまでの目撃記憶の研究を評論した。目撃記憶の研究を予防的研究、診断的研究、回復的研究の3つのタイプに分けて考察した。さらに、これらの研究を展望することにより、予防的研究と診断的研究は多く行われているが、回復的研究が少ないことを考察した。特に、モンタージュ法や似顔絵法が、回復的研究の手法のひとつと考えられることを示唆した。 第二に、幼児と大人を対象に顔認識の実験を行った。この研究の目的は、似顔絵を描くことが顔の再認にどのような影響を及ぼすのかを発達的に検討した。そこで、被験者にはビデオでターゲットの登場人物を呈示した。ターゲットの記銘は、偶発記憶課題であった。被験者がビデオを視聴した後で、半分に被験者である似顔絵呈示群には、実験者が顔を描いて、先程見たターゲットの顔を思い出すように促した。残り半分の被験者である統制群には、家の絵を描いて、家を思い出すように促した。その後で、数枚の顔写真を見せ、その中からビデオの人物がどれであるのかを再認させた。 その結果、幼児では、統制群よりも似顔絵呈示群で、再認成績が有意に優れた。他方、大学生では似顔絵呈示群よりも統制群で、再認成績が優れた。この結果は、幼児と大学生で似顔絵が顔記憶に及ぼす効果が異なることを示している。幼児では、似顔絵を呈示することによって、ターゲットについて視覚的リハーサルが促されたのであろうと仮定された。他方、大学生はターゲットについて自発的に視覚的リハーサルを行っているが、似顔絵を呈示することによって妨害されたのではないかと仮定された。このことは、事件を目撃した後で、犯人についての似顔絵を描くことが、大人にとっては負の効果があるが、幼児には促進的効果があることを示唆している。
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