2000 Fiscal Year Annual Research Report
不安・抑うつの認知バイアスに関する認知情報論的研究
Project/Area Number |
12610128
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
生和 秀敏 広島大学, 総合科学部, 教授 (90034579)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原口 友佳子 (尾関 友佳子) 広島大学, 総合科学部, 助手 (30304372)
岩永 誠 広島大学, 総合科学部, 助教授 (40203393)
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Keywords | 特性不安 / 状態不安 / 注意バイアス / 記憶バイアス / 感情の維持 / ドットプローブテスト / 感情誘導法 |
Research Abstract |
不安になると,嫌なことに目が向きやすく,嫌なことばかりが思い出されることがある。こうした不安時の認知上の歪みを,注意バイアスと記憶バイアスと呼んでいる。注意バイアスとは脅威刺激に対して注意が向きやすくなる傾向であり,記憶バイアスとは脅威情報を思い出しやすくなり頭から離れなくなる状態を指している。認知バイアス研究は,認知的行動療法の基礎的研究として位置づけられ,バイアスの生じるメカニズムとその影響要因の特定が重要な研究課題となっている。平成12年度は,注意バイアスと感情との関連,および注意バイアスと記憶バイアスの関連について検討した。 検討1では,注意バイアスの生起が感情の維持と関連しているかの検討を行った。ポジティブ感情とネガティブ感情を実験的に喚起し,注意バイアスをみたところ,ネガティブ感情において注意バイアスが生起し,ネガティブ感情が維持されることが示された。注意バイアスが生じた被験者と生じなかった被験者を較べたところ,注意バイアスが生じた被験者において感情の維持が認められることがわかった。注意バイアスにより脅威情報が選択的に入力されることで,不安感情が維持されている可能性がある。 検討2では,特性不安の異なる被験者を用いて,状態不安の操作を行い,注意バイアスと記憶バイアスの関連性について検討した。注意バイアスは特性不安に関わらず,状態不安が高まると生じることがわかった。それに対し,記憶バイアスは高不安状況下で高特性不安者のみで認められた。注意過程と記憶過程とでは異なるバイアスの認められ方をしており,処理過程によってバイアスを生じさせている要因が異なる可能性がある。
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