2000 Fiscal Year Annual Research Report
柔軟な自己概念が精神的健康に及ぼす効果に関する実証的研究:一貫性礼賛への問題提起
Project/Area Number |
12610151
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Research Institution | Koshien University |
Principal Investigator |
金川 智恵 甲子園大学, 人間文化学部, 助教授 (70194884)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂田 桐子 広島大学, 総合科学部, 講師 (00235152)
黒川 正流 比治山大学, 短期大学部・幼児教育科, 教授 (90037036)
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Keywords | 自己概念 / flexibility / ジェンダーアイデンティティ / 現実自己 / 規範自己 / 能力自己 / 道具性 / 表出性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、自己概念の認知的構造が精神的健康や社会的適応に与える効果を検討することである。その際、認知構造ないの「非一貫性」に注目し、その適応的意味を検討する。 われわれはこの問題に関して、自己概念一貫性の強固な追及は社会的適応に阻害要因になることを見出した(Kurokawa,et al.,1999)。即ち、自己概念のうち対人行動に関連する側面について、行動的傾向(behavioral self)、規範的傾向(should self)、能力的傾向(can self)の三次元を導入し、この3つが高度に一貫していないほうが社会的適応性が高いことを見出した。平成12年度は以下の点を中心に検討した。 (1)研究目的:"should self","can self","behavioral self"というintrapersonalな3次元間の高度な一貫性が必ずしも適応的でないという前回見出された結果の信頼性と妥当性を検討すべく、このことが、葛藤や問題を喚起する可能性のある他の領域においても認められるか否かを検討する。そのひとつはジェンダーに関する領域である。すなわち,自己が道具性(I:男性的特性)もしくは表出性(E:女性的特性)をどの程度備えているべきか(should self),男性的もしくは女性的行動能力をどの程度備えているか(can self),実際にどの程度男性的もしくは女性的に行動しているか(behavior self),という3次元の一致度が,ジェンダーに関する役割葛藤の程度やそれによるストレスとどのように関連しているかを吟味する。 (2)結果:以下の結果が見いだされた。 1)"can self"の高低が、自己概念の認知構造パターン全体のpositivity/negativityを規定する。 2)"can self"のレベルが一定であれば、道具性、表出性、のどちらか一様な自己概念の構成よりも、道具性・表出性の両者が兼備された輻輳的な構成の方が精神的健康度、生活満足度が高かった。 3)しかしすべてのレベルにおいて強度が一貫して高いタイプは、強度においてズレのあるタイプほど適応手記ではなかった。 以上の結果を第4回アジア社会心理学会(オーストラリア、平成13年開催予定)で報告する予定である。
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