2001 Fiscal Year Annual Research Report
柔軟な自己概念が精神的健康に及ぼす効果に関する実証的研究:一貫性礼賛への問題提起
Project/Area Number |
12610151
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Research Institution | Koshien University |
Principal Investigator |
金川 智恵 甲子園大学, 人間文化学部, 助教授 (70194884)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂田 桐子 広島大学, 総合科学部, 助教授 (00235152)
黒川 正流 九州女子大学, 文学部, 教授 (90037036)
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Keywords | 自己概念 / 柔軟な自己概念 / 非一貫性 / 文節化 / 認知構造 |
Research Abstract |
本研究の目的は、自己概念の認知的構造が精神的健康や社会的適応に与える効果を検討することである。その際、認知構造内の「非一貫性」に注目し、その適応的意味を検討する。 われわれはこの問題に関して、自己概念一貫性の強固な追及を、「柔軟でない自己概念」と定義し、このことが社会的適応の阻害要因になることを検討してきた。その結果、自己概念のうち対人行動に関連する側面について、行動的側面、規範的側面、能力的側面の三次元を導入し、この3つが極度に一貫していない方が社会的適応性が高いこと、またこの関係はgender identityについても同様であることを見出した。 (1)平成13年度の研究目的とその変更:自己概念の非一貫性と精神的健康との関係について前年度に見出された結果の信頼性と妥当性を検討すべく、アメリカの学生を対象にデータを収集すべく準備をしていたが、同時多発テロの影響でこれを断念せざるをえなかった。従って妥当性検討を、他の種類の非一貫性についても、認知的構造と精神的健康との間に同様な関係が見出されるか否かの検討に変更した。上記三次元が一貫性している状態、例えばすべてにおいて強度が一貫して高い状態は、観点を変えれば、3次元の認知が分節化していない状態と再定義できる。この観点から、精神的健康にとのような認知の分節化が影響するかを探索的に検討した。次いでそれらの認知の分節化タイプと平成12年度で検討した、自己概念の非一貫性との関係、そのような認知構造と精神的健康、自尊感情との関連を検討した。 (2)結果:精神的健康に影響を及ぼすと考えられる認知的分節化の探索的検討 1)認知分節化の他のタイプとして、不快経験の不快さの程度の認知の仕方、及び不快事象の生起可能性についての認知の仕方に関する分節化が精神的健康と関連が強いことを見出した。 2)不快さの客観的程度を分節化して認知できるひと、不快事象の生起はある時点、ある領域に限定されて生じるだろうという、分節化した認知をするひとは、精神的健康度が高いことが見出された。 結果:認知の分節化と自己概念の非一貫性、精神的健康との関連 1)前期で見出された認知の分節化と自己概念の非一貫性の関連、これらと精神的健康、自尊感情との関連については、平成13年度の後期にデータ収集を行い、現在、分析結果を検討中である。
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