2000 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者の特性に関する発達・社会心理学的研究-「クロージング(人生の終幕)」を基幹概念として-
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12610152
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
高田 利武 奈良大学, 社会学部, 教授 (20008189)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤崎 眞知代 明治学院大学, 文学部, 教授 (90156852)
矢守 克也 奈良大学, 社会学部, 助教授 (80231679)
遠藤 由美 奈良大学, 社会学部, 教授 (80213601)
湯川 隆子 三重大学, 教育学部, 教授 (40100945)
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Keywords | 高齢者 / 文化的自己観 / コンピテンス / アイデンティティ / ジェンダー観 / クロージング |
Research Abstract |
高齢者を対象とした本研究計画は第1〜第5の研究から構成されるが、第1研究(自己概念に関する文化心理学的研究)に関しては、既に開発済みの「文化的自己観尺度」を児童期から老人期に至る対象者に予備的に実施し、それらの発達過程における高齢者の位置が成人期までとは異なり、むしろ日本文化とは背反的な相互独立的特質をもつことを明らかにした。第3研究(コンピテンスに関する発達心理学的研究)においても、既存のコンピテンス尺度を予備的に高齢者に実施したところ、因子構造や尺度値等の点で、欧米文化を背景とした従来の尺度を高齢者にそのまま適用することは疑問が大きいという結論に達し、来年度においては、日本文化に於ける成人のコンピテンスの意味内容を改めて検討する予定である。 第2研究(アイデンティティ形成に関する研究)と第4研究(ジェンダー観に関する発達心理的研究)では、定年退職を控えた社会人を対象とした半構造化面接を実施した結果、安定した自我同一性や性役割同一性が形成されているとは言い難い傾向が見出され、その背景要因を探るべく、来年度研究に於いては第1研究の知見との関連を検討する予定である。 第5研究(特異な体験(災害・戦争)を語る高齢者に関する研究)では、「阪神大震災の語り部」を称する高齢者の社会活動において参与観察を行い、彼等が自己の体験を次世代に語る活動が、自己の人生の終幕(クロージング)を意味づけんとする企図を内包しちていることを解明しつつある。
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