Research Abstract |
満期産児と早産児との最大の相違点はNBAS結果の方位反応と啼泣性である。早産児は個人差あるが,退院後1〜3ヶ月で満期産児と同レベルの方位反応を示した。また多くの早産児の啼泣性は生後2ヶ月迄非常に低く,3ヶ月以降,満期産児と同レベルの啼泣性を示した。 生理学的指標である心拍・脳波を児の睡眠中に測定した。まず,心拍はサンプリング周波数1Kzにて測定し,パワースペクトル分析にて解析した。退院後1週間以内に測定した心拍データから抽出された高周波成分,すなわち副交感神経成分はNBASの注視と相関を示した。注視は将来の認知発達を予測させる項目である。これは,心拍データが将来の発達を予測させる,というFox and Porges(1985)の結果を支持するものである。 脳波はサンプリング周波数200Hzにて,Fp1,Fp2,C3,C4,O1,O2,T3,T4の8点を測定した(10-20法)。各測定点ごとにパワースペクトル分析を行い,デルタ波,シータ波,アルファ波,ベータ波の4周波数成分を抽出した。その結果,多くの児は加齢に伴い,特にC3,C4においてアルファ波,ベータ波成分の顕著な増大を示した。そして,各測定点におけるパワー値の左右差等には大きな個人差が見られた。以上が平成15年度の実績である。 尚,平成16年2月末現在,計20名の協力者を得ている。退院後12ヵ月に達した者14名中,11名から母子分離再会実験の参加を得,残り6名は16年度中に完了する予定である。この実験結果を情動的データとし,そしてその後2歳までをデンバー発達検査とベイリー発達検査にて追跡調査し,これを認知発達的データとする。最終的には,新生児期におけるNBAS結果,心拍,及び脳波周波数の個人差が,環境との相互交渉を経て,生後2年間の認知・情動発達にどのような影響を与えるかを検討する予定である。
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