2000 Fiscal Year Annual Research Report
子どもの論理・数学的認識の獲得における自己組織化のメカニズムに関する実証的研究
Project/Area Number |
12610159
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Research Institution | National Institute for Educational Policy Research |
Principal Investigator |
中垣 啓 国立教育政策研究所, 初等中等教育研究部, 総括研究官 (00124181)
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Keywords | 自己組織化 / 数学的認識 / 認知発達 |
Research Abstract |
申請書の研究実施計画通り、初年度は数学的認識における自己組織化、特に、くじ引き課題を用いて割合観念の自己組織化について実験的調査を行った。ただ、当初は小中学生を通して行う計画であったが、自生的な自己組織化的変容が顕著にみられると予想される時期に的を絞って調査を実施した。即ち、小学生低中学年を被験児として、昨年11,12月には通常式くじ引き課題(二つのくじ袋で当たる確率の大小を比較させる課題)を実施し、この課題に関する理解水準を調べ、今年1,2月には同じ被験児について変数式くじ引き課題(一方のくじ袋の当たりの数あるいははずれの数を連続的に変化させていくくじ引き課題)および確率等化くじ引き課題(二つのくじ袋で当たる確率を同じにするため必要な当たりやはずれのくじ数を決めさせる課題)を実施し、次のような知見を得ることができた。 1 通常式くじ引き課題では発達の筋道が一様ではなく、筋道にいくつかのタイプがあることが明らかになった。 2 変数式くじ引き課題では変数の変化にも関わらず一定の反応をする者から変化の系列ごとに異なる反応を示す者まで、認知システムの安定性に大きな幅があることが明らかになった。 3 変数式くじ引き課題あるいは確率等化くじ引き課題に対する反応は、通常式くじ引き課題に対する反応に必ずしも対応しておらず、極端な場合は、当たりとはずれの数で言えば全く同じ組み合わせを持つくじ引き課題であっても、三つの課題(通常式、変数式、確率等化)でそれぞれ異なる判断を示した者さえ見いだされた。 4 調査の途中で生ずるような突然の自己組織化的反応がほとんど見られなかったことは、自己組織化が行動として表出されることは希であり、むしろ認知システムにおける流動性の変容として捉えられるべきことが示唆された。
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