2002 Fiscal Year Annual Research Report
子どもの論理・数学的認識の獲得における自己組織化のメカニズムに関する実証的研究
Project/Area Number |
12610159
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中垣 啓 早稲田大学, 教育学部, 教授 (00124181)
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Keywords | 自己組織化 / 論理数学的認識 / 仮説演繹的推論 / 認知システム |
Research Abstract |
今年度科研費交付申請書の研究実施計画に従って、自己組織化を誘発すると予測されるような問題場面を意図的に設定して調査を行った.具体的には、幼稚園年長児・小学生を被験者として『加減の同時性と差異の意識化』における自己組織化、小学生を被験児としてThog課題と呼ばれる仮説演繹的推論課題における自己組織化について実験的調査を行った。以上の実証的研究から、次のような知見を得ることができた。 1 『加減の同時性と差異の意識化』においては、同数集合間で要素を移動させた場合、両集合間の要素数の差異を予測させた。ほとんどの被験者は最初差異として移動要素数を予測した。実際に移動を実行し差異を確認させると最初の予測と違っていたことを認めるものの、次の試行になると再び同じ誤りを操り返すことが多かった。このことは認知システムの出す回答が現実と一致しないことを確認するだけでは、そこに何か不可思議なことが生じている、としか捉えることが出来ず、それだけではシステムの自己組織化を促すには十分ではないことを示している。 2 Thog課題では、手がかりとなる情報から仮説を立て、いずれの仮説の元でも同じ帰結をうる事から一定の結論を導くという仮説演繹的推論が求められる。この課題を仮説演繹的推論課題としてそのまま与えるとほとんどの者は誤った推論をするにもかかわらず、この課題の仮説演繹的推論過程を複数の過程に分解し、各過程を一つの課題として順次提出していくといずれの課題についても難なく解答できる者が多かった。このことは認知システムが課題解決に必要な論理的操作を獲得しているだけではこの課題が解けないこと、認知システムは必要な諸操作を適切な順序で組み立て執行するという行動プログラムのようなものをも含みうることを示していると思われる。
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