2001 Fiscal Year Annual Research Report
山間農村と大都市近郊地域の比較による地域社会構造変動の実証的研究
Project/Area Number |
12610167
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
白井 宏明 埼玉大学, 教育学部, 教授 (40015920)
|
Keywords | 都市化 / 生活様式 / ムラ / 家連合 / 村落 |
Research Abstract |
1.昨年度に引き続き、山間農村地域の事例として福島県矢祭町を取り上げ、同町における全「行政区」(20「行政区」)の「区長」を対象として、質問紙による聞き取り調査を実施した。同町の「行政区」は大字を基盤にして構成されている団体であるが、大字集落については、1983年に土地の古老を対象とした聞き取り調査を実施しているので、今回はそれとの比較を念頭において調査を行った。さらに同町の各種役職者に対する聞き取り調査を実施した。また昨年度収集した、同町宝坂地区における区有文書資料の整理及びリライトを継続した。収集資料及び調査データの分析の結果、同町の村落組織は、近世以来の「ムラ」の構造を基盤にしながらほぼ昭和戦前期に形成された村落機構を、戦後の高度成長期まで維持してきたことが明らかになった。また1980年代以降、直系家族としての再生産が困難になった家族が増加しており、これに伴い、慣行的な共同作業や祭祀の継続が困難になっており、村落組織の構造や村落機構(役職組織)の活動も、行政への依存性を高めていることが明らかとなった。 2.また上記矢祭町の他に、千葉県安房郡三芳村山名(山間農村)において、土地の役職者及び古老を対象とした聞き取り調査を実施し、戦後の村落組織の変容を明らかにするとともに、区有文書のうち戦後期のものを中心に、閲覧とコピーを行った。同地域は高度成長期以降、有機農業と農産物の「産直」に取り組んできており、これによって農業を基軸とした村落組織の構造が、矢祭町のそれとは異なったありかたをしていることが明らかとなった。
|