2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610168
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Research Institution | CHIBA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
桜井 厚 千葉大学, 文学部, 教授 (80153948)
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Keywords | 団塊の世代 / ライフヒストリー / 男らしさ / 性別役割分業 |
Research Abstract |
本年度は、当該研究期間(平成12年度〜平成14年度)の最終年度にあたり、一昨年以来おこなってきたライフヒストリー・インタビューのトランスクリプトの編集、整理をおこなって読み解く作業を重ねながら、さらに追加のインタビューをおこなうことによって、団塊世代の「男らしさ」について報告書を作成することが目標であった。 ライフヒストリーには、その基本的な視座が異なるいくつかのアプローチがある。それを私は、実証主義的アプローチ、解釈的客観主義アプローチ、対話的構築主義アプローチの三つにわけており、本報告書では対話的構築主義アプローチを基本として、いかにインタビューの相互的なやりとりを通して団塊世代のジェンダーが構成され解釈されているか、に焦点をあてた。 もとより団塊世代というカテゴリーは、通常、1947年〜49年生まれの世代を指しているといわれるが、団塊世代としての自覚がない人についても、構築主義的アプローチが成立するかは議論のあるところではある。ただ、どのような人も、インタビューを進めるにつれて、多少なりとも自分の属する時代や状況から影響されて現在の自分を形成していることは読みとれた。ほぼ誰もが、人口の多さ、学園闘争(紛争)・職業・仕事、子どもとの関係、老後などにふれているが、とくに現在の社会状況あるいは若者世代の問題性を指摘しながら、それをいずれも自分たちの世代の責任であると自認しているところに、戦後の社会を担ってきた世代であることの自覚がかいま見られた。 家庭内の妻や子どもとの関係について、コミュニケーションのあり方は比較的良好な印象を受ける事例が多かったが、仕事の多忙、単身赴任など働き方による制約が大きい。家事役割については、まったく妻に任せているけれども、それでかならずしもよいと考えているわけでもない。家事はできるけれどやらないなどの言い方もみられた。いわば、性別役割分業を否定しながらも、現実はそれに甘んじている、中途半端なところに位置しているようだ。男らしさは、その点で微妙な言い回しの中から明らかにされるべきものである。ともあれ、彼らの人生全体の語りから、いかに彼らが自己の役割や世代的アイデンティティを把握しているのかをあきらかにしたい。 報告書の目次概略は以下の通り。I 序、1.基本的視座、2.調査対象者とライフヒストリー・インタビュー調査、II 団塊世代の男たちの生活世界、1.世代論、2.男らしさ、3.人生設計、4.理念と現実、III 団塊世代の男の個人生活史、1.シングルライフ、2.定年後の一人暮らし、IV まとめ。
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