2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610215
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
田間 泰子 大阪産業大学, 経済学部, 助教授 (00222125)
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Keywords | 家族計画 / 少産化 |
Research Abstract |
現段階での研究報告は以下の通り。(1)日本国有鉄道の家族計画運動は1955年以後1960年代中が最も盛んで、その後衰退した。(2)指導員は看護婦・助産婦資格を有する者たちで、多くは職場の上司の命令によって抜擢され、東京で研修を受けたのち各地でほとんど一人で従事した。(3)一人で広範囲な鉄道管区を担当するために大規模数のクライエントをもち、週に数日の外勤というかたちで各社宅の家族(女性中心)・各職場の職員(男性)に大人数対象の講演および個別相談・指導を行っていた。(4)受胎調節指導の内容は、受胎と避妊の基礎知識の提供から個別的な夫婦関係や不妊・妊娠相談などのプライベートな領域のものまで非常に広範で多岐にわたり、高い指導能力を要求するものであった。(5)このような仕事は天候に関わりなく一人きりで続けられるものであったため、非常に厳しく忍耐力を要したと思われるが、外勤が多いために職場での理解が得がたく孤立しがちであった。(6)指導員たちを支えたものは、今の時点で言えることは、戦前・戦後の厳しい社会状況の経験)、戦前において既に志をもってなった看護婦や助産婦という仕事への強い気持ち、指導員を支える夫などの家族の存在である。(7)受胎調節実地指導の画期的な点は、まず指導を受ける側の女性たちや男性たちが生殖についての多くの仕組みを知り、また誰かと語り合って解決するという行動を学んだということである。しかし、それ以上に私本人にとって印象的であったことは、指導員自身が指導のための研修を受けるまでそのような知識についてほとんど無知だったという事実である。生殖のあり方や家族の構成を自己決定しコントロールしていくために必要な知識と行動が、まず指導員の女性たちに、そして彼女たちから多くの女性たちと男性たちに全国的に普及せられたことは、日本社会にとって非常に重要な意識的・行動的変化の過程であったと思われる。
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