2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610227
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Research Institution | Kenmei Women's Junior College |
Principal Investigator |
蘭 由岐子 賢明女子学院短期大学, 生活学科, 助教授 (50268827)
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Keywords | ハンセン病 / 療養所 / 在宅患者 / スティグマ / 隠蔽 / パッシング |
Research Abstract |
本年度は、従来からのハンセン病療養所入所者へのインタビューに加えて、療養所から社会復帰して一般社会に暮らすひとびと、いわゆる「在宅患者」3人(いずれも男性)にインタビューできた。ハンセン病に対するスティグマゆえに、ハンセン病者であったことを隠蔽しつづけているひとたちにアクセスすることは困難なことであるが、今回は、ハンセン病専門医と当事者の同意によって、インタビューが実現した。 彼らは、発病後療養所に入所したものの、軽快退所や無断退所によって社会復帰し、「さいわい」、京大で外来診療がおこなわれていることを知り、社会復帰の状態を継続できた。現在60代半ばから70代半ばの年齢層にあり、定年まで勤めを果たせたこと、趣味とボランティア活動に生きられたことを感謝している。しかし、彼らの人生は、決して平穏ではなかった。ひとりは、私立の療養所退所時に「断種」手術を受けており、妻にも病歴を隠している。そのため、子どもをもてなかったことを人生の終焉近くになればなるほど、悔やむこととなっているという。妻への罪悪感もある。別のひとりは、妻には結婚後の再発時に病気のことを告知したものの、結婚前の発病については話しておらず、いまだにばれることを恐れている。故郷のひとびとは、うすうす感づいているようだがそれゆえ、自分からは何もいわず隠蔽し続けている。もうひとりは、結婚後子どもも生まれてから発病し、故郷のひとびとも入所・退所・社会復帰について知っている。いずれも、職場や現住所地近隣には病気のことは決して話しておらず、「パッシング」し続けている。 彼らの人生を支えてきたのは、外来診療の存在が第一であるが、さらに治療法が見つかってからの発病(ひとりをのぞく)という「(歴史)世代」的条件、後遺症がほとんどないという「身体」的条件もかかわっていよう。
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