2001 Fiscal Year Annual Research Report
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12610227
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Research Institution | Kenmei Women's Junior College |
Principal Investigator |
蘭 由岐子 賢明女子学院短期大学, 生活学科, 助教授 (50268827)
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Keywords | ハンセン病者 / ハンセン病社会復帰者 / 病いの経験 / フェルト・スティグマ / ハンセン病国賠訴訟 / パッシング |
Research Abstract |
昨年度実施した社会復帰者(いわゆる「在宅患者」)のインタビューの成果を5月の第74回日本ハンセン病学会学術大会および11月の第74回日本社会学会大会において報告した。対象とした社会復帰者は、いずれも療養所入所経験をもち、軽快退所ないし「逃走」によって退所し、そののち幸運にも外来診療をしていた大学病院に通院することができていたが、日常生活においてはハンセン病既往歴を隠し続けていた(パッシング)。なかには妻にさえ明らかにしていない者もいた。すなわち、彼らのフェルト・スティグマはきわめて強かったのである。しかし、彼らには、外来診療の機会が与えられており、その点で、ハンセン病違憲国賠訴訟であきらかにされた一般「退所者」とは一線を画すことができ、真に「社会復帰」者であったといえよう。なぜなら、彼らは、医療に支えられてそれぞれ職業を全うすることができ、一抹の悔いを残しながらもほぼ満足する人生を送ることができたと考えているからである。しかし、ハンセン病者としてそれを病むことの意味は決して減じることはなかった。 また、熊本の菊池恵楓園と香川の大島青松園の入所者たちにインタビューを重ねることができた。療養所は、5月のハンセン病国賠訴訟の原告側勝訴確定以降世間の耳目を集めるとともに、各府県からの担当官による謝罪訪問、各入所者への賠償金・補償金の支給、さらには追加提訴の訴訟過程の継続等々で、入所者が多忙をきわめていた。その様子を参与観察した。 さらに、継続的にインタビューを受けてもらっていた入所者の死に際し、療養所における葬儀に臨席する機会を得られた。療養所入所者にしてはきわめてめずらしく、無宗教でとりおこなわれた「お別れの会」であったが、参列者のなかに親族のすがたは見えなかった。
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