2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610227
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Research Institution | Kenmei Women's Junior College |
Principal Investigator |
蘭 由岐子 賢明女子学院短期大学, 生活学科, 助教授 (50268827)
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Keywords | ハンセン病 / 病いの経験 / 療養所 / 主観的意味世界 / 社会復帰者 / ライフヒストリー |
Research Abstract |
本年は、本研究の最終年度であるため、これまでおこなった聞き取りの全体をまとめるための作業として、まずは、これまでにおこなったライフヒストリーの聞き取り調査をトランスクリプトにまとめ、さらにそれらの読み込みをインテンシヴにおこなうことを第一とした。そして、ある島の療養所に長年生きたある男性の「悔い」の人生について深く考察することができた。療養所内での2回の結婚と離婚に対する思い、そして在郷家族との「水面下の交流」とそれへの満足の気持ちと、結果として「水面下」にしてしまった自分自身の姪たちへのアドバイスに対する後悔の気持ちというアンビバレンス。さらに、それらに関連するみずからの「障害観」。そして、自分自身の経験を他の入所者のそれとは区別する見方。とりわけ、その男性独自の意味世界は、一昨年に原告勝訴で終わったハンセン病訴訟において、理論的には原告の立場を理解していても「絶対に原告にはならない」という姿勢にみてとれた。それは、彼自身の入所時の経験とそれに対する心情に基づいていた。つぎに、本研究全体の方法論的位置づけを考察するため、医療社会学における「病いの経験」研究をレビューし、さらにその具体的手法としてのライフヒストリーの方法論を吟味した。ライフヒストリーは、実証主義から出発し、解釈的客観主義を経て、より聞き取りの場それ自体を注視したアプローチが盛んになってきた。本研究もそれに位置づけられることを理論的に明らかにした。また、近年、「歴史と記憶」についての研究も盛んになっており、また、ハンセン病関連の社会科学的研究も出てくるようになったので、それらをテーマにした研究会やセミナーに出席し、わたし自身の調査研究を相対化するまなざしをやしなった。 また、いまだ成果はだせていないが、あらたな聞き取りを大島青松園にておこなった。
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