2001 Fiscal Year Annual Research Report
教育改革における教育委員会の役割―地方教育行政に関する『中教審答申』以降の動向に注目して
Project/Area Number |
12610237
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
堀 和郎 筑波大学, 教育学系, 教授 (20037047)
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Keywords | 地方教育行政の改革動向 / 市町村教育委員会 / 地域特性 / 教育長の特性 / 改革の規定要因 |
Research Abstract |
21世紀を展望した公教育の再編のための教育改革が時代の課題となる中で、教育委員会を地方教育行政機構の中核としてあらためて位置付け、教育委員会に対して主体的な自己改革と自主的で積極的な教育行政を求めた中教審答申『今後の地方教育行政の在り方について』が提出されて以降、教育委員会では、どのような改革にどの程度取り組んでいるのかという問題関心から、初年度は都道府県教委を対象にその改革の取組の実態を調査したが、本年度は、同じテーマで、市町村教委を対象に全国的なアンケート調査を実施した。全国の16府県500の市町村教委教育長に対して郵送調査を行った。その結果、市教委-138、町教委-105、村教委-31、合計274の教委から回答を得た(回収率、55%)。このサンプルについて、(1)市町村教委における改革の全般的動向-市町村教委はどのような改革にどの程度取り組んでいるのか。(2)改革の動向と地域特性-市町村教委における改革の動きは、その地域の特性によって規定されているのか。(3)改革の動向と教育長の特性-市町村教委の改革への取組は、その主体的条件ともいうべき教育長の特性により左右されるのか、の三つの観点から分析を試みた。 分析の結果、今回の地方教育行政の改革動向に関して、二つのことが明らかになった。ひとつは、改革の進展に関して、行財政能力の不足に由来する小規模教委の置かれた困難な状況であり、もうひとつは、改革の動向を大きく左右する存在としての教育長の重要性である。つまり、人口規模3万人未満の小規模教委はそれ以外の規模の教委に比べ相対的に改革の動きに立ち遅れが見られるが、他方で、政治・行政手腕と教育識見を兼ね備え、問題解決志向が強く、交流の幅広さや議員や住民への働きかけの積極的さといった特性を持つ教育長のもとでは改革の進展度が著しいという結果が明白に現れており、教育長が改革の推進要因のひとつであることが明らかになった。
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