2000 Fiscal Year Annual Research Report
近世日本における教育のメディアに関する文化史的研究
Project/Area Number |
12610258
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻本 雅史 京都大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (70221413)
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Keywords | メディア史 / 寛政異学の禁 / 儒学 / 学習社会 / 寺子屋 / 藩校 / 教育の社会化 / 素読 |
Research Abstract |
初年度に当たる今年度は、おもに以下の2つのテーマに重点をおいて研究した。ひとつは日本近世(とりわけ近世後期)の儒学のあり方に関するものである。すなわち18世紀末に江戸幕府が断行した寛政異学の禁政策が、以後近世後期における儒学のあり方をいかに規定し、教育や出版にいかなる意味をもったのか、という点を整理して、その成果を2000年8月27日から9月2日にカナダのモントリオールで開かれたXXXVIth International Congress of Asian and North Afrrican Studies(ICANAS)・において、"The Kansei Prohibition of Heterodoxy and the Intellectual Climate in Japan the Early 19th Century"(寛政異学の禁と19世紀前期の知的状況)と題して、口頭報告(英語)をおこなった。他のひとつは、教育におけるメディアのあり方がいかに学習者(子ども)に大きな影響を与えるかという視点からの、歴史的変化をふまえた理論的な整理である。その成果の一部は「教育の社会化と学習社会に向けて-歴史からの視点-」という論文にまとめて発表した。すなわち近代の制度としての学校を、知の伝達という意味でメディアの一つと見立てたとき、高度成長以後の商業的なマスメディアが子どもの文化的環境を大きく規定し、メディアとしての学校がそれに敗北している状況を、歴史的視点から捉えて叙述したもめである。その上で学校を機軸にした新たな意味での教育の社会化が、いかなる形で可能となるか、とりわけこれからますます進展していくはずの学習社会(生涯学習を中心とした21世紀の教育のあり方)との関わらせて、展望した。
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