2001 Fiscal Year Annual Research Report
近世日本における教育のメディアに関する文化史的研究
Project/Area Number |
12610258
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻本 雅史 京都大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (70221413)
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Keywords | メディア史 / 文字社会 / 出版文化 / 手習熟(寺子屋) / 往来物 / 官版 / 貝原益軒 / 益軒十訓 |
Research Abstract |
第2年度にあたる今年度は、当初の予定通り、おもに口語による知の伝達方法とそのメディアに重点をおいて、資料・文献類の収集とその分析・検討につとめた。夏に九州の日田や杵築地方をおとずれ、おもに近世後期の九州の儒者たち(三浦梅園、帆足万里、広瀬淡窓、など)の教育史的な資料を調査し、あわせて儒者たちの情報伝達のネットワークのありかたについての知見を、現地見学などを通して、深めることができた。その上で、「文字社会の成立と出版メディア」を主題とする論文草稿を執筆することができた。すなわち日本近世が「文字社会」として成立してきたことを、おもに兵農分離体制とそれにともなう文書行政を採用した幕藩体制社会のあり方の結果として論じている。村共同体の村請制度、都市化と商業の進展にも視野をひろげ、近世日本の文字文化が統一的なものとして成立したこと、およびその歴史的な意味を、近代国民国家の前期的成立という視点から論じた。さらに統一的文字文化の成立が近世の出版文化の成熟につながったという視点をとり、大量出版があらたな近世の知の伝達のメディアとして登場したと、そのことの歴史的な意味を考察した。近く脱稿予定のこの論文は、平成14年度の前半期に、教育社会史に関するの論文集に収載されることになっている。引き続き、口頭で民衆的な教化を行い、広く全国に運動を展開した石門心学を、社会教化のメディアの視点から論じる草稿を準備中である。
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