2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610260
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
村上 登司文 京都教育大学, 教育学部, 教授 (50166253)
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Keywords | 平和博物館 / 軍事博物館 / 戦争記憶 / 社会的規定因 / 平和教育 / 平和意識 |
Research Abstract |
日本と海外にある軍事博物館と平和博物館への社会的規定因の分析により、次のような歴史的要因、政治的要因、地域的要因が作用していることが明らかとなった。 1)歴史的要因:欧米また日本でも、第一次大戦以前より軍事博物館が開設されていた。平和博物館が多く開設されるようになった時期は第二次大戦以降と遅く、また小規模な施設である。戦勝国の英米には、反戦平和主義的な平和博物館はほとんど開設されてない。ただし向平和の平和博物館が開設されている。第二次世界大戦での戦勝を記念する軍事博物館が、戦争終了後50年以上を経てからも開設されている(米と英のD-Day記念館)。敗北した日独には、国民の中に反戦平和主義の広がりがあり、反戦的な平和博物館が多く開設されている。 2)政治的要因:軍隊をもっている国の多くは、何らかの軍事博物館的な施設を持っている。英米では、正義のためには戦争や軍事力の行使は必要だというのが国民のほぼ共通認識となっており、軍事博物館の開設に対して広く国民からの支援がある。第二次大戦中にアメリカが解放軍の役割を担った国や地域では、アメリカ軍の戦争での活躍を展示する親米的な軍事博物館が開設された。軍事博物館は、入館者に国防意識の啓発や愛国心の涵養などの政治教育的機能を果たしており、また軍隊への親近感を増し、軍事的教養を深める働きがある。 3)地域的要因:戦争が起こって数年(数10年)が経過した後、戦跡にその戦争(作戦、戦闘、戦災)についての軍事博物館または平和博物館が開設される。米英では、平和博物館の入館者数よりも軍事博物館への入館者数の方が多い。平和博物館の開設が不在の(少ない)アジア・中東・東ヨーロッパ地域にも、軍事博物館は開設されている。戦勝国で解放軍の役割を果たしたアメリカでは軍事博物館が観光スポットであると同時に娯楽施設となっている。
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