2002 Fiscal Year Annual Research Report
フランスにおける公民教育の強化と非行・暴力対策プログラムに関する実証的研究
Project/Area Number |
12610261
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小野田 正利 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60169349)
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Keywords | 校内暴力 / フランス教育 / 非行問題 / 公民教育 / 生徒指導 / 教職論 |
Research Abstract |
1.本研究を始めた3年前では、青少年の犯罪と非行は、現代フランスにおける主要教育問題の一つであったが、その後今日では深刻な社会問題の一つとしてとらえられる傾向がますます強くなってきた。生徒数1000人あたりでは3.5件の校内暴力が発生しており、特に都市郊外の地域を中心に、内容も粗暴なものが増えはじめ、被害者も生徒だけでなく教職員もそのターゲットとされることが多くなっている。教員が担当するクラスでの授業の中においても、秩序破壊や問題行動が見られるようになったのは極めて最近のことである。 2.本研究では、この状況に対してフランス教育行政当局と各学校は、どのような方策を取ろうとしているのかを究明することにあった。政策を分析すれば、第1に厳罰を科す方向での法整備がおこなわれていることであり、第2は人的措置を大幅に増やす方向での環境条件の改善をおこなったことであり、第3には「市民性の育成」という形で、全体の底上げを図る教育の重視である。 3.市民性の育成という点では、「学校生活」(vie scolaire)という概念を拡大させ、学校の管理運営への関与と参加をはじめとして、生徒を積極的に自治と貴任の担い手として育成していく方向をより鮮明に打ち出していることであり、同時に「公民教育」(education civique)を教科の中心として位置づけることを続けている。 4.こういった状況を前にして、教科指導に関心と職域の範囲を限定させてきたフランスの教員が、トータルに生徒の学校生活そのものを把握する必要を認識しはじめてきたことが注目される。生徒指導と教科指導をあわせ担う日本の教員の役割の「再評価」と関連させて考察すべき新たな検討課題である。
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[Publications] 小野田 正利: "日本におけるフランス教育研究の到達点と課題"フランス教育学会紀要. 14号. 83-92 (2002)
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[Publications] 小野田 正利: "学校と地域の関係づくりにおける研究者の役割"日本教育行政学会年報. 44号. 54-65 (2002)
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[Publications] 小野田 正利: "教育の国家責任のあり方-学校選択制の分析を通して-"日本教育経営学会紀要. 28号. 221-228 (2002)
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[Publications] 小野田 正利: "「非行・校内暴力」が最大の教育病理-フランス"CS研レポート(啓林館). 48号. 22-29 (2003)
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[Publications] 日本教育制度学会: "教育改革への提言集"東信堂. 242 (2002)