2002 Fiscal Year Annual Research Report
大学における非伝統的学生のための学習支援に関する実証的研究
Project/Area Number |
12610270
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
小池 源吾 広島大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (00178170)
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Keywords | 非伝統的学生 / 社会人学生 / 学習支援 / 学習スタイル / 生涯学習系センター / 大学開放 |
Research Abstract |
本プロジェクトでは、本邦大学が、21世紀型生涯学習機関としての責務を果たすための課題を明らかにする目的から、(a)非伝統的学生の特性と学習スタイル、(b)非伝統的学生の特性を顧慮した学習支援の現況、(c)生涯学習系センターの組織と機能、について実証的に研究を行った。 研究の成果を要約すると、以下のようである。 (1)フール(Houle,C.O.)の学習志向性に拠って分析すると、大学院に学ぶ非伝統的学生は、「目的志向」、「学習志向」が伝統的学生のそれを上まわった。非伝統的学生は、広範な目的と強い動機づけをもって大学に入学していることがわかった。 (2)学習スタイルについては、学習目標の設定、内容や方法、ペースの決定において伝統的学生の場合、自己決定を求めるのに対して、非伝統的学生は「教師と一緒に」事を運ぼうとする。つまり、穏便な自己主導性(self-directedness)の発揮を希望する、などの傾向がみとめられた。 (3)大学教師は、非伝統的学生のある部分については理解できているものの、概して従来型の大学教育観に立脚し、学生観にしても伝統的なそれを踏襲する傾向がみられる。 (4)したがって、大学教師には、非伝統的学生を特徴づける「成人性(adulthood)」への洞察がしばしば欠ける。また、非伝統的学生は、高いself-respectに特徴づけられる反面、同時にフォーマルな学習環境に身を置くことに強い不安や恐怖を感じている。こうしたアンビバレントな感情に対して、教師の側での配慮はとぼしい。また、生活者であることに起因する学習上の障害にも、教師は疎い点も問題である。 (5)伝統的学生の指導が、教師の個人的な経験とパーソナリティに大きく依存している現状は、早急に改善する必要がある。それには、ファカルティ・ディベロップメント等を実施することは勿論、長期的には非伝統的学生の学習支援に関する調査研究組織の整備が欠かせない。
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[Publications] 小池源吾: "非伝統的学生の特性と学習スタイル"日本社会教育学紀要. 38号. 57-68 (2002)
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[Publications] 小池源吾: "「第三の機能」をめぐる現状と課題"文部科学省生涯学習政策局「第8回生涯学習実務者協議会テキスト」. 52-56 (2002)
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[Publications] 小池源吾, 志々田まなみ, 佐々木保孝: "大学における成人学生の学習スタイル:公開講座受講生と社会人学生を中心に"広島大学大学院教育学研究科紀要第3部(教育人間科学関連領域). 第51号. 1-10 (2002)
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[Publications] 小池源吾: "本邦大学における「第三の機能」の制度化(1)"広島大学大学院教育学研究科紀要第3部(教育人間科学関連領域). 第51号. 11-18 (2002)
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[Publications] 小池源吾編著: "『本邦大学における生涯学習系センターの現状と課題』(科研二年次報告書)"広島大学大学院教育学研究科社会教育学研究室. 116 (2002)