2000 Fiscal Year Annual Research Report
ヨーロッパ中世と近代における子育て習俗に関する歴史人類学的研究
Project/Area Number |
12610283
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
北本 正章 青山学院大学, 文学部, 教授 (10186273)
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Keywords | 子ども観 / 中世家族 / 近代家族 / ヨーロッパ / 子育て習俗 / 家族戦略 / 親代わり / 歴史人類学 |
Research Abstract |
本研究の第1年度に当たる2000年4月から2001年3月にかけては、関連文献の海外発注のための調査活動と並行して、子ども観研究の各分野における研究動向を掌握するために、イギリス、フランス、ドイツを中心に、中世から近代にかけての子育て習俗を扱った先行研究の渉猟・検討を主目的にした。とりわけ今年度は、中世の子ども観をめぐって1960年代の、いわゆる「アリエス・ショック」を端緒に始まった論争が、1980年代以降の実証研究においていかなる決着を見たのかを視野に入れつつ、子ども観における中世と近代の非連続面と連続面の把握につとめた。代表的な先行研究のうちP.AriesとE.Shorterについての検討結果は、論文「アリエス『子供の誕生』-人間の誕生・結婚・死-心性へのまなざし」および「ショーター『近代家族の形成』-「愛情生活」は近代に生まれた」〔いずれも『ブックガイド・家族』(平凡社,2001.3刊行予定)に所収〕で、また、ヨーロッパの中世末期から20世紀にかけての子ども観の変容については、「近代イギリスにおける子ども観の社会史的展開とその宗教的背景-Victorian! Familyの社会史的位相をめぐって」〔『キリスト教文化研究センター研究叢書』第9号(青山学院大学総合研究所,2001.4刊行予定)に所収〕で、それぞれまとめた。以上のことから、(1)育児能力は本能行動とは区別され、社会的・文化的な学習能力の一部であること、(2)子どもへの愛情と教育投資は子ども数との相関関数であること、(3)人口動態は「家族戦略」に大きく規制されること、(4)伝統社会の子ども観・子育て習俗・社会化の機能の背景に「親代わり(in loco parentis)」の社会化文化がはたらいていたこと、などのオーヴァービューが得られ、歴史人類学的アプローチの有効性を確認した。以上の諸点については、今後すすめる個別テーマごとの研究分野の成果を渉猟するなかでさらに詳細に分析する計画である。
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