2001 Fiscal Year Annual Research Report
幼児期における「ジェンダーへの社会化」に関する実証的研究
Project/Area Number |
12610296
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Research Institution | Kyushu University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
藤田 由美子 九州保健福祉大学, 社会福祉学部・社会福祉計画学科, 講師 (10284134)
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Keywords | ジェンダー / 幼児期 / 社会化 / 仲間集団 / メディア / 保護者 / 保育士・教師 |
Research Abstract |
本研究は、幼児期における「ジェンダーへの社会化」の実態を明らかにすることを目的とした。主な結果は次の通り。 (1)子ども向けメディアの内容分析平成13年3・4月,9・10月放映の子ども向けテレビ番組35番組,幼児〜小学校低学年向け絵本112冊121作品を分析した。その結果,女性の登場人物が少なく,描かれている職業的役割が限定されていること等を明らかにした。 (2)幼稚園・保育園における参与観察平成12年7月〜平成13年3月・11月,宮崎県北部の2保育園と広島県南部の1幼稚園で,のべ36日間行った。(a)園児たちの色彩やテレビ番組の好みがジェンダー化されていた。また,遊び中の相互作用に,ジェンダー支配がみられた。(b)教師・保育士による園児の役割分担等はおおむねジェンダー・フリーであった。一方,グループ分けのために,ジェンダー・カテゴリーを日常的に使用していた。 (3)教師・保育士を対象としたインタビュー平成13年11・12月,観察調査を行った園の教師・保育士(いずれも女性)に,園児の遊びやメディア接触,保育活動、過去のジェンダーに関する経験について尋ねた。教師・保育士自身,「らしさ」のしつけをすることはあまりない一方,分類基準としてのジェンダー・カテゴリーは自明のものとみなしていた。また,彼女たちのジェンダーに関する経験が保育実践に影響を及ぼすことがうかがえた。 (4)幼児保護者を対象とした質問紙調査平成13年3月,同園の保護者を対象に行った(225セット配布,161セット回収)。かれらの中学時代の経験がジェンダー観に影響を及ぼすこと,保護者のジェンダー観が,子どもへのしつけや教育に影響を及ぼすこと等が明らかになった。 以上より,幼児期における「ジェンダーへの社会化」は、子ども自身もエージェントとなりつつ,錯綜した文脈の中での営みであることが考えられた。
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