2002 Fiscal Year Annual Research Report
ポスト・コロニアル状況における先住民社会の変容の研究-オーストラリアとカナダの比較の視点から
Project/Area Number |
12610310
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
窪田 幸子 広島大学, 総合科学部, 助教授 (80268507)
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Keywords | 植民地経験 / 国民国家 / 先住民 / ジェンダー / アボリジニ / イヌイット / オーストラリア / カナダ |
Research Abstract |
本研究3年度目にあたるの本年度の主たる目的は、研究の3つの柱としてきている「ミッションの遺産」「社会福祉の影響と生業変化」「先住民としての権利主張の伸張」という視点を統合する方向で、研究を行うことであった。 カナダについては、ミッションの記録、生業変容、権利主張の伸張などについての文献および資料の蓄積はかなり進み、最終段階の整理を本年度はおこなった。ミッションと生業変容についての大きな資料を所蔵している昭和女子大学での資料調査とともに、関係研究者との討論を行うとともに、事務補助者を得て関係資料を整理する作業を継続した。カナダの情報については、かなりの程度整理が終了したと考えている。オーストラリアについては、昨年度の補充調査で、社会福祉の影響、生業変化、権利主張の伸張の問題についての資料および、キャンベラの国立先住民トレス海峡民研究所でのキリスト教ミッション関係資料を収集したが、その整理をおこなった。また、それ以外に不足している資料の収集を、大阪の国立民族学博物館で、コピー機による複写、筆写を主な方法として行なった。これらの資料については、事務補佐員を得て整理した。オーストラリアのミッション関係の歴史的資料とともに、生業変容、そして先住民の権利伸張をめぐる状況にかかわる資料については、かなりの程度集積がすすみ、整理もめどが立ってきたと考えている。そして、この三つの視点の間には、非常に明確な相互関係があることが分かってきたとともに、オーストラリアとカナダの共通性と相違点が明らかになりつつある。 来年度は、両地域について蓄積されたこれらの歴史的情報と、現在みられる変化についてのデータを整理検討し、これを研究のとりまとめにつなげる予定である。初年度から行っている順次蓄積されつつある文献情報は、今年もデーターベース化を継続しておこなった。来年度のとりまとめ後、これは関係研究者と共有する予定をしている。
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[Publications] 窪田幸子: "ミッションの遺産-ポストコロニアル状況に見るキリスト教"杉本良男編『宗教と文明化』ドメス出版. 122-142 (2002)
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[Publications] 窪田幸子: "ジェンダーとミッション-オーストラリアにおける植民地体験"山路勝彦・田中雅一編『植民地主義と人類学』関西学院大学出版会. 239-264 (2002)
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[Publications] 小山修三, 窪田幸子: "多文化国家の先住民-オーストラリア・アボリジニの現在"世界思想社. 304 (2002)