2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610317
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Research Institution | Tezukayama Gakuin University |
Principal Investigator |
鈴木 清史 帝塚山学院大学, 文学部, 教授 (80196831)
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Keywords | 聴覚障害 / 難聴 / ろう / 手話 / キュード・スピーチ |
Research Abstract |
平成14年度の主な研究調査活動は、これまでの2年間の資料収集活動の継続と文献による補足情報の入手および蓄積である。調査は、具体的には週末や長期休暇を利用して行なった面接による資料収集である。この対象としてきたのは、聴者社会が「聴覚障害」という枠組みでとらえている集団のなかでも「難聴者」と呼ばれ、自認している人びとである。 このセグメントを特に取り上げようとしているのは、いくつかの理由がある。もっとも重要な理由のひとつは、かれらが置かれている曖昧な状況と関わっている。それは、かれらが「ろう」者よりは外部の音を直接耳にすることができるが(そのために聴者に近いとされている)、一方で聴者ほど十分にはそれを把握できないため、音の再生にも困難を抱えることが多い(やはり障害を抱えている、と考えられてしまう)、というものである。このような、かれらにかかわる多重的な社会的評価によって、かれらは「聴覚障害」というカテゴリに置かれながらも「ろう」者とは異なる状況を経験していると考えられる。それは、「ろう」者の場合昨今の手話ブームの中で、「ろう」文化について肯定的な認知を獲得しつつあるように思われるが(依然として十分とはいえないにしても)、「難聴」者の立場はかれらの抱えている文化的社会的問題を認知されにくいという現実を生じさせている。また、そのせいなのか「難聴者」は従来の聴覚障害者に関わる研究においては、ほとんど注目されても来なかったといえる。 調査は、必ずしも調査者が期待しているように進んでいるわけではないが、これまで個別面接を基本として実施してきている。面接は当事者者本人だけでなく、かれらの家族や友人にも広げ、多方面からの情報入手につとめている。現在はライフヒストリーを構成するために、これらの資料の整理を進めているところである。そして次年度(平成15年)には成果発表を行なう予定である。
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Research Products
(1 results)