2002 Fiscal Year Annual Research Report
ペルーにおける世界文化遺産概念と国家・地域の文化遺産概念との相互関係に関する研究
Project/Area Number |
12610322
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
關 雄二 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 助教授 (50163093)
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Keywords | 世界遺産 / ナショナリズム / ペルー / 歴史観 / グローバリゼーション / エクアドル / ユネスコ / 国家 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ユネスコが現在積極的に進める文化遺産保護対策とその背景にある世界遺産条約の概念・思想とが、文化遺産をとりまく地域社会、さらにそれらを包摂する国家としての歴史観やアイデンテイティとどのように関係するのかを南米ペルーの考古学的遺産を例に検討することにある。 本年度は、ユネスコのリマ事務所におけるインタビュー調査を海外共同研究者に依頼し、現地で実施されているユネスコのプロジェクトの把握、ペルーの文化行政に対するユネスコ側の意見を聴取した。これと同時に、ペルー国における文化行政担当者に対するインタビュー記録と文化財保護関係資料を分析に加えることができた。 さらに世界遺産に指定された南高地クスコ県マチュ・ピチュ遺跡においては、観光省側が進めるロープーウェイ計画に対する周辺住民の態度を調査し、意見を聴取した。ここでは、昨年調査した南高地アレキーパ県におけるミイラ帰属事件同様に、地域住民が阻害された形で開発計画(国=観光局)、あるいはそれに対する反対運動(考古学、文化財関係者)が推進されてきたことを確認された。 また、昨年に引き続き、インカ帝国に対する歴史観をとらえるべく、エクアドル南部高地クエンカ県で調査を行った。現在ここに住むカニャリは、インカの侵略に激しく抵抗する一方で、スペイン人の到来に際しては協力的態度を示した民族集団の末裔として知られる。ところが、今日のカニャリの人々は、白人支配者側への抵抗として、こうした歴史観を柔軟に変更させ、むしろインカとの連帯感を強めていることがわかった。ここには、侵略者インカの起源地でもあり、独立後、度重なる国境紛争を展開してきた隣国ペルーと近年、平和協定が結ばれ、歴史教育のなかでも両国の対立感が緩和されてきたことも影響していると考えられる。
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Research Products
(1 results)