2000 Fiscal Year Annual Research Report
55年体制の基礎過程〜1950年代の知事選挙と地域開発〜
Project/Area Number |
12610326
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
功刀 俊洋 福島大学, 行政社会学部, 教授 (60153318)
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Keywords | 知事選挙 / 保守分裂 / 野党連合知事 / 農協と県政 / 地域開発と県政 / 田中覚 / 千田正 |
Research Abstract |
平成12年度は、分析対象とした各県の戦後政治史、労働運動史、農業協同組合史、地域開発史に関する文献を購入し、8月に岩手県、9月に三重県に調査に行き、高度成長前半期の両県の知事選挙に関する資料を収集し、これらの文献と資料によって、知事選挙の政治構造を分析した。 1955年の三重県知事選挙は、現職で三選をめざした青木理(民間出身)に対し、社会党推薦の田中覚(農林官僚)が挑戦し、田中が圧勝した。このような結果になった原因の第一は、青木県政二期目の県単独事業の膨張(宮川電源開発、道路・海岸堤防建設)による財政破綻であり、青木打倒・田中擁立を先導したのは賃金抑制・大量首切りが予想された県職員の労働組合であった。また県内の保守党も青木三選をめぐって分裂した。第二は、同県の農林・企画部長時代の田中の地域振興での手腕・実績であり、県議会内の農政会と県内の農協指導者に加えて、四日市の財界が田中を強力に支援した。つまり、田中の当選は、労農・商工界が財政再建と地域開発の両立という困難な課題の実現を、田中の改革型経営能力に期待したものであった。他方、1963年の岩手県知事選挙は、自民党推薦の新人増田盛(農林官僚)と社会党推薦の新人千田正(元参議院議員)が対決し、千田が圧勝した。この選挙の背景は、自民党政府の農政・地域開発政策への岩手県民の疎外感であった。千田を支持したのは労働組合と農協青年連盟であったが、むしろ、基本法農政による農畜産物の価格低迷と中小農業者の冷遇、岩手県内に有力な新産業都市の候補地がないことによる県民の不満が、自民党推薦の中央官僚候補への批判票として千田を当選させたといえる。ここに、1950年代に工業化をリードした三重県と60年代になっても地域振興の方向を見出せない岩手県との差異が現れていた。
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Research Products
(1 results)