2000 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における地方名望家層の社会的ネットワーク形成とその時代的変質に関する研究
Project/Area Number |
12610330
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
齋藤 康彦 山梨大学, 教育人間科学部, 教授 (00153825)
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Keywords | 地方産業史 / 地方政治史 / 地方名望家 / 近代日本 / 蚕糸業 / 閨閥 / 企業役員 / 商工会議所 |
Research Abstract |
本年度は、本研究の中核である社会的ネットワーク=人的結合網を構築するにあたっての基本的な資料となる明治・大正期、昭和戦前期、昭和戦後期、高度成長期、安定成長期といった各時代ごとの「人事興信録」、各種学校の「卒業生名簿」、銀行・企業の「株主名簿」などの発掘と収集を重点的に実施した。また、長期的な観測を可能とする「帝国銀行会社要録」、「日本全国諸会社役員録」、「帝国信用録」、「株式年鑑」などの企業役員名簿の収集を行なった。この際、プライバシー保護の観点から広く一般に公開されている資料類の利用方法の開発に意を注いだ。その結果、例えば、戦後についてこれまでほとんど利用されていなかった「高額納税者名簿」、「企業所得リスト」などの資料化を進めデータベースの充実に努めた。これによりトップクラスだけでなく、資料的な制約が大きかったミドルクラス以下の地方名望家の動向も把握できる見通しが立った。 また、近代以降の山梨県の基幹産業であった蚕糸業や戦後の研磨宝飾業の実態を明らかにできる資料、さらに地方名望家層の活動の拠点ともなった甲府商工会議所関係資料の収集を行なったが、この過程で山梨県内では未発見であった「甲府商工会議所事業成績書」を入手できたことは幸いであった。以上述べてきた基本的名簿資料の収集作業と並行して、収集資料の分析視角をより明瞭なものにする意味でこれまでの地方政治史や地方産業史の先行研究成果を蒐集して検討を加えた。この結果、明治から昭和戦前期にかけて近畿地方や中京地方での企業出資者間においてネットワークが形成されていたことが明らかとなり、相互比較を通じて本研究の日本全体でもつ意義が一層明確なものとなった。次年度は資料のパーソナルコンピュータへの入力作業を集中的に行なうとともに、本研究の中核である各時代ごとの社会的ネットワーク=人的結合網図の作成を行なう。
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