2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610332
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
布川 弘 広島大学, 総合科学部, 助教授 (30294474)
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Keywords | 太平洋会議 / 太平洋問題調査会 / 新渡戸稲造 / 平和運動 / 国際連盟 / 不戦条約 / 中国国民党 / 賀川豊彦 |
Research Abstract |
本年度は,太平洋問題調査会(Institute of Pacific Relations,略称IPR)と太平洋会議(Pacific Conference)における新渡戸稲造の役割,および日本友和会(Fellowship of Reconciliation, FOR)を中心とした平和運動における賀川豊彦の役割を明らかにすることを研究の目標とした。そして,主として国内の研究機関が収集・所蔵している史料の調査を行った。とりわけ,平成12年度及び13年度における海外調査で収集した史料と付き合わせる作業を完成するための史料調査に重点を置いた。具体的には,一橋大学図書館が収集・所蔵している大窪愿二コレクションの史料(Nd-A880 PACIFIC COUNCIL,1927,1929,1931),東京大学教養学部アメリカ太平洋地域研究センターが収集・所蔵している高木八尺文庫の太平洋問題調査会関係資料を調査し,必要なものを複写した。 太平洋問題調査会と太平洋会議は,国際連盟において新渡戸稲造が確立した国際的な知的協力による国際平和の実現という理念に基づいて開催された。とりわけ,1929年に開催され新渡戸が議長をつとめた京都会議と,1931年に開催された上海会議は,満州事変を間にはさんで,日中関係を基軸に国際関係が大きく転換する時期に開催されており,そこでの議論の内容とその帰趨は,当時の国際平和運動の特質を考える上で,格好の分析対象である。本年度は,その二つの会議における議論を分析し,新渡戸の考え方を明らかにすると同時に、新渡戸が設立した日本友和会を中心とする日本国内での平和運動との関係,及びそこでの賀川の役割を明らかにし,報告書にまとめた。報告書では,満州問題をめぐる議論において,国際平和主義の立場にたつ新渡戸ら知識人が一貫して日本の立場を弁護し,中国の代表団と激しいやりとりを繰り返しており,当時最も優れた国際感覚をもっていた日本の知識人ですらが,大きな限界をもっていたことを強調した。
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Research Products
(1 results)