2000 Fiscal Year Annual Research Report
近世日蘭貿易における輸出商品の推移とアジア市場の動向
Project/Area Number |
12610351
|
Research Institution | Hanazono University |
Principal Investigator |
鈴木 康子 花園大学, 文学部, 助教授 (00281501)
|
Keywords | オランダ / オランダ東インド会社 / 日本銅 / 小判 / 樟脳 / 出島 / 長崎貿易 / インド貿易 |
Research Abstract |
本研究は、博士論文「近世日蘭貿易史の研究」を完成することであった。本博士論文は全体が8章からなり、第1章平戸貿易と銅、第2章近世初期の貿易商人、第3章銅貿易の数量的考察、第4章樟脳生産と販売、第5章小判貿易とアジア市場、第6章18世紀初期の日本輸出商品の販路、第7章18世紀前期オランダの対日貿易政策、第8章日蘭貿易の危機となっている。本研究を完成するために、申請書において特に重要な点を4項目あげた。すなわち、(1)平戸商館時代の輸出商品と取扱商人 まず輸出商品は銅を中心として第1章で明らかにした。そして商人については第2章において、この時期は商館を取り巻く特定の商人が存在したことを明確に示した。(2)長崎商館移転後の貿易状況 これは第3章において、ヨーロッパでは銅不足のため銅価格が上昇し、これにより1650年代後半には日本銅もヨーロッパへ送られるようになり、それに伴い銅輸出量も増加したこと。また第5章では、1640年代以来アジア・ヨーロッパ市場へのアメリカ銀の大量流入により金銀比価が変動し、金の価格が騰貴したため、オランダは1660年代より日本から小判を大量に輸出するようになったことを示した。(3)間金の問題 オランダが小判を輸出する際に市場価格より高く取り引きしていたので、その差額を間金と言った。これは第5章において、間金制度が創設された当初の用途とその変遷について明らかにした。(4)17世紀後期幕府の貿易統制 第3・5章で述べたように、これは主要な輸出商品であった銅・金(小判)の国内産出量の減少と国内消費の上昇に伴い、次第に貿易縮小措置を取らざるを得なくなる。しかも幕府は、財政的な窮乏対策として、長崎貿易からの利潤に注目し、これを獲得するためにも貿易管理を強化したことを明らかにした。
|