仁和寺文書並びに御室の研究

2001 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 12610362
• Research Institution: PaJeological Association of Japan, inc
• Principal Investigator: 関口 力 財団法人古代学協会, 古代研究所, 助教授 (30216527)
• Keywords: 仁和寺 / 御室 / 覚行法親王 / 写本 / 灌頂記 / 金沢文庫本

Research Abstract

仁和寺のご理解、御協力を得、膨大な量に及ぶ当寺所蔵文書の内、第三代御室・覚行法親王(中御室)の御灌頂記を中心とした歴代御室の灌頂記を実見し研究を遂行。
平成12年度は、平安後期の文人である大江匡房筆録の『中御室御灌頂記』の写本翻刻、及び覚行法親王の伝記的研究、さらに、現在は残されていない覚行の記した日記『中御室御記』の逸文についての紹介を行った。前者は『仁和寺研究』第二輯に、後者は所功博士の還暦記念論集『國書・逸文の研究』にそれぞれ掲載した。
平成13年度は、『中御室御灌頂記』(非匡房本)と共に、その他の灌頂記についても取り上げ、その成果は、『仁和寺研究』第三輯に掲載される。今回の『中御室御灌頂記』の写本は前年度と異なり、筆録者不明のものであった。質量ともに前年度のものとは比較にならないほど見劣りのするものであるが、灌頂記全般の研究を進めてゆくうちに、仁和寺本と派性格の異なる金沢文庫所蔵の灌頂記について考える機会となった。そして、仁和寺で行われた御室の灌頂記がなぜ金沢文庫にも纏まって所蔵されるのか、またそれはなぜ仁和寺本と内容が異なるのかについての仮説を提示した。その結果、政治の実権を握った鎌倉が、宗教政策にも本格的に着手したことを示す象徴的な事例が、灌頂記の書写という行為に具現化されているとの結論を導くに至った。
なお、現在仁和寺に焦点を当てた研究は急速に進展しているが、本研究の実績により、各研究組織からの連携を求める動きが活発化されてきている。点としてはじめた研究体制が、線として結ばれつつあり、情報の量も格段に増えてきている。こうした事実も、本研究の実績に伴なう成果として特筆すべきであろう。

Research Products

• [Publications] 関口 力: "翻刻『中御室御灌頂記』"仁和寺研究. 第二輯. 17-49 (2001)
• [Publications] 関口 力: "紹介『中御室御記』逸文"所功先生還暦記念会編『國書・逸文の研究』. 118-123 (2001)
• [Publications] 関口 力: "翻刻『中御室御灌頂記』(非匡房本)"仁和寺研究 (入稿済). 第三輯. (2002)