2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610377
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
大澤 正昭 上智大学, 文学部, 教授 (30113187)
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Keywords | 妬婦 / 一夫一婦制 / 多妾制 / 鮮卑族 / 婚姻制度 / 南北朝 / 唐 / 宋 |
Research Abstract |
本年度の研究の重点は南北朝〜宋までの婚姻制度の変化を明らかにすることにあった。「妬婦」問題を手がかりに、それを研究した結果、いくつかの重要な事実を把握することができた。第一に、南北朝期は鮮卑族の婚姻制度の影響が大きく出現しており、厳密な一夫一婦制度が存在した。一方、従来の漢民族の間では妾を多く持つ風習も残在しており、一夫一婦多妾制が行なわれていた。第二に、唐代になると「妬婦」概念が拡大し、「悍妻」「懼内」といった言葉が流行した。これは「妬婦」に象徴される一夫一婦制を非難する意味あいを持つ言葉であり、鮮卑族の一夫一婦制をなし崩しにしようとする風潮のあらわれと理解することができる。第三に宋代の「妬婦」問題がある。基調としては唐代の「妬婦」概念が引き継がれるものの、それに対する全社会的な圧力はより強化されたと見られる。「妬婦」は国家によっても一般社会においても抑圧されることとなった。しかし一方では正妻の地位に対する保証も明確になってきた。妾と妻の地位の区別が明示されるようになったのである。このようにして、従来の一夫一婦多妾制は内容的な変質が迫られ、いわば一夫一婦プラス多妾制とよばれるような婚姻制度ができ上っていった。おおよそ千年間に及ぶ期間の婚姻制度の変化の様相がうかがえるのである。
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Research Products
(2 results)