2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610377
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
大澤 正昭 上智大学, 文学部, 教授 (30113187)
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Keywords | 家族規模 / 家族構成 / 『太平広記』 / 『夷堅志』 / 上流階層 / 庶民階層 / 唐宋変革期 / 男系相続 |
Research Abstract |
今年度の研究の重点は、家族の規模と構成を分析することに置かれていた。そしてこれまでに収集した研究論文と史料に基づき、以下のような成果が得られた。 *使用した史料は『太平広記』(唐代)および『夷堅志』(宋代)である。これら残存している分量の多い小説史料を使用することで、以下に述べるような統計的処理が可能になった。 *小説史料について、家族関係の記事、すなわち家族の人数、続柄などがわかる記事を網羅した。そして最初にその人数を数えた結果、唐代・宋代を通じて4-6人が通常の家族員数であった。これは他の時代の人口統計とも一致する数値である。 *ただし、上流階層と庶民階層の間には明確な違いがあった。両階層の間の人数の違いは1-2人であるが、それは主に子供の数の差であった。この点で唐代と宋代との違いに注目すると、上流階層では家族の人数が減少していたが、庶民階層では変化がなかった。 *その変化の原因は、家族構成の変化によるところが大きいと思われる。つまり、唐代には直系家族以外の血縁者が家族に含まれていたが、宋代にはこうした血縁者はほとんどなくなっていた。この間に父系直系家族が優位になっていたのである。 *子供の男女比を見ると、圧倒的に男児が多かった。宋代にはその差がさらに拡大していた。男系相続原理がいっそう強まっていたと見られる。これは何らかの形での産児制限がおこなわれていたためである。とくに女児を殺す風潮が強く、宋代にその傾向が明確になっていた。 以上が、本年度の研究実績である。これは中国語論文として天津・南開大学で開催された学会で報告し、論文集に掲載される予定である。
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